あくまでアストンマーティンだが外観の細部には独創的な意匠も
アストンマーティンのラインアップのメインストリームのひとつ、ヴァンテージがニューモデルへと生まれ変わり、11月21日に発表された。”ヴァンテージ”の名前は1951年にDB2の高性能版として初めて登場し、それ以来、アストンマーティンのスポーツマインドを象徴するネーミングとして知られてきた。新型ヴァンテージは、その名を独立した車種に冠した4代目となる。
先代はアストンにしてはフレンドリーなプライスと、この手のクルマにしてはコンパクトなボディサイズからエントリーモデルに見られがちなところもあった。しかしそれよりも極めてスポーツカーらしい爽快なドライビングフィールと理想的な運動性能が高く評価され、2005年から12年にわたって愛され続けてきたモデル。アストンの歴史におけるベストセラーでもある。
そうしたヒット作の後を継ぐモデルは、クルマとしてのコンセプトはもちろん、スタイリングまでキープとなるケースが多い。だがアストンマーティンは守りに入ることなく、スタイリングからして攻めの姿勢を見せている。まずパッと見の印象がずいぶん違うのだ。デザインは当然ながら同社の副社長兼造形部門のトップであるマレック・ライヒマンによるもので、彼の作品らしく、シルエットそのものは各部に黄金比が埋め込まれた極めてバランスに優れるアストンのグランドクラシックといえる美しいものだ。だが、ディテールは従来のアストンマーティンのカタログモデルには見られなかった斬新な試みに満ちていて、しなやかで筋肉質な肉食動物のような、攻撃的な印象すら感じさせる。クローズド専用車のヴァルカンやボンドカーだったDB10の香りも漂っていて、兄貴分のDB11とは明らかに異なる趣。
また、アストンのひとつのアイコンだったフロンフェンダー後方のサイドストレイクの代わりに、ホイールハウス内の空気を強制的に吸い出して車体のリフトを抑える“サイドジル”が新設され、空力的にも大きな進化を遂げている。
ボディサイズは全長が4465mm、全幅が1942mm、全高が1273mm。これは先代よりも83mm長く、76mm広く、13mm高い数値だ。そして兄貴分のDB11より284mmも短く、ポルシェ911と較べても34mm短い。この時世、よくこの程度の拡大ですませてくれたものだと思う。ホイールベースは2704mmで先代より103mm伸びているが、それでもDB11より101mm短い。トレッドの数値は公表されていないが、全幅がワイドになっていることを考えると、ホイールベース対トレッドの比率はさほど変わってはいないことが推測できる。先代の持ち味だった運動性能のよさをキープするためのこだわりだろう。車重はミニマムな仕様の乾燥重量で1530kgという数値。先代のカタログモデルのなかのもっともスポーティな仕様であるN430の乾燥重量が1610kgだったことを考えれば、大幅に軽量化が進められたといえる。