自損事故なら重量級のクルマよりも被害が少なることも
最近はどのクルマも、モデルチェンジと同時に大幅な軽量化が行なわれるのがトレンドになっています。10%といったダイエットを実現するクルマも少なくありません。最近の軽量化の手法のひとつは、とても硬い高張力鋼板=ハイテンや、超高張力鋼板=超ハイテンの使用範囲が大幅に拡大したことでしょう。強度が2倍なら、使用する材料が半分で済む計算になります。
また部品点数の削減、内装部品の単純化といったことも、軽量化に有効です。たとえばスマートフォンのようなタッチパネルのコントロールスイッチが採用されているクルマもありますが、あれもまたコストダウンと軽量化に有効です。勘違いしている人も多いと思いますが、タッチパネルというのはそもそもローコストな操作パネルです。
軽いということは、いろいろな部分にメリットがあります。まずクルマの動力性能に大きく影響しますね。軽量化すると加速性能、そして燃費性能が良くなります。とくに日本のユーザーはカタログ燃費に対する意識が強過ぎると思うのですが、その計測は110〜230kg刻みの重量区分になっています(国土交通省の基準)。
たとえば1200kgのモデルは等価慣性重量が1360kgとして計測されますが、それが1195kgであれば1250kgになります。110kgも重量が違えば、燃費がかなり変わってきますね。だからひとつでも下のランクになるように、軽量化したいわけです。
車種によっては、燃料タンクの容量が極端に小さいモデルをラインアップしていたりしますが、それはカタログ燃費の数値を良くするための燃費対策グレードです。日本ではクルマの重量は燃料が満タンの状態で計測するので、そういうことが起きるわけです。そうした日本の妙なルールは、JC08モードからWLTCへと移行する時に改善されれば良かったのですが……。
衝突安全性能にも、軽量化は効いてきます。えっ? 驚きますか? 固定された物体に衝突したとき、クルマが持っていた運動エネルギーは、ほぼそのまま跳ね返ってきます。つまり橋脚や強固な壁、あるいは道路の下に落下したときなど、軽量であれば衝突時のエネルギーは小さくなるわけです。もちろん衝突吸収性能を確保するために、どのような構造・設計が行なわれているかも重要なわけですが、基本的には単独での衝突では軽量化は有効です。
ただクルマ対クルマの衝突事故では、相手の運動エネルギーが入ってきますから、たとえば正面衝突なら重量の大きなクルマのほうが基本的には安全性は高くなりますね。
もちろん運動性能の面でも、軽量化は有効です。巨漢のアスリートが活躍するのは、力技の重要性が極めて高い、重量挙げや日本の大相撲などです。基本的には軽量なほうが運動性能が高いのは、感覚的にも理解できると思います。
もちろん軽量化するための手法によってはデメリットも存在しますが、基本的には軽量だから困るということは起こらないと思います。