技術の日産が作った庶民に愛される名車たち
11月23日は、「いいニッサン」の日。というわけで、今年は歴代日産車のなかから、優れたベーシックカーを振り返ってみよう。
1)プリメーラ
プリメーラは1990年から2008年まで生産された、 2リッターサイズのセダン(ハッチバック、ステーションワゴン)。初代から三代目まで作られたが、特筆すべきは初代のP10型だろう。ヨーロッパ指向の高い設計で、スタイリング、パッケージ、ハンドリング、実用性ともに、欧州車の同クラスを凌駕することを目標に作られ、それを達成した一台。
とくにハンドリングは、それまでの日産のFF車のクオリティを大きく上まわったほど秀逸。サスペンションがやや硬いという評価もあったが、長距離を乗っても疲れることがなく、小気味のいい腰のあるサスペンションに仕上がっていた。当時、日産は901運動を進めていて、その成果が一番活かされたのが、R32スカイラインとこのP10プリメーラだった。
室内やトランクもクラストップクラスの広さを誇り、使い勝手も非常に良かった。こうした設計思想は「プリメーラパッケージ」と呼ばれ、国産車のベーシックカーの底上げにも大きく貢献したといえる。ちなみに、このプリメーラの車両パッケージングの開発には、R35GT-Rの開発主管を務めた水野和敏氏も参画していた。
ボディ剛性もしっかりしていて、当時の日産の主力エンジンだったSR20もNAながらパワー、トルクともに十分で、よくできたエンジンだった。その後、2回のフルモデルチェンジを経て、2008年に生産終了した。
2)サニー
長らく、日産のエントリーモデル(大衆車)として、親しまれてきた1台。今の40~50代の人なら、子供の頃、父親が乗っていたクルマがサニーだった、という人も多いはず。バブル前までは、トヨタのカローラと販売台数を争ったライバル同士で、「一家に一台」というクルマの大衆化を支えてきた。
傑作車といえるのは、まず2代目のB110サニー。ツーリングカーレースで活躍したTSサニーは、運動性能が非常に優れ、OHVの1.2リッターエンジンだったA型はレース用チューンで、1万回転も回った!
また、B110系のピックアップトラック、B120サニートラックは、国内で23年間、海外では37年間という異例の長寿モデルとして愛された。シンプルで基本設計が優れていた何よりの証拠。通称「サニトラ」。FRレイアウトで、軽量、安価、パーツが豊富ということで、いまでも根強い人気がある。
最後のFRモデル、4代目のB310も富士フレッシュマンレースの主役級マシンとして知られている。6代目、B12系は、トラッド・サニーのキャッチコピー。当時、日産でライセンス生産していたVWサンタナの流れを汲み、地味ながら高剛性ボディを投入。走りが素直で、サスペンションのチューニングも上々だった。
現在のニスモカー(ロードカー)の先駆けともいえる、「TWINCAM NISMO」というグレードが用意されたのも、この6代目サニー。
8代目サニーのB14型は、大人気だったグループAレースに代わってはじまった、JTCCレースにも出場。前投影面積が小さいのが利点だったが、1995年に1勝したのみ……。ニスモでは、「NISMO 180R」というロードコンプリートカーを企画したが、R33スカイラインGT-Rベースの「NISMO 400R」と違い、市販されることはなかった。2004年、9代目サニーで生産終了。
3)ブルーバード
ブルーバードも、サニー、スカイラインと並ぶ、日産の伝統的かつ代表的な車種だったが、2001年、10代目で生産終了になっている。そんな歴代ブルーバードで、名車と言えるのは、3代目510型ブルーバード。和製BMWといわれ、日産初の四輪独立懸架サスを採用。BMWの十八番、フロント:マクファーソン・ストラット、リヤ:セミトレーリングアームという豪華な仕様。直列四気筒のL型エンジンを搭載し、1970年のサファリラリーで総合優勝。「ラリーの日産」の立役者。
6代目ブルーバードの910型は、FR最後のブルーバードで、シルエットフォーミュラに「ブルーバード・ターボ」として参戦。スカイラインターボの長谷見昌弘、シルビアターボの星野一義と並んで、柳田春人のブルーバードターボが、マフラーからアフターファイヤーを吹きだしながらコーナーに進入していくシーンが印象的だった。
8代目 U12型は、(アテーサ)4WDモデルが登場。オーテックジャパンが開発した、ラリーの競技ベース車両、ブルーバードSSS-Rが設定されたのが大きな特徴。標準車よりターボを大型化し、ブーストもアップ。エンジン自体もチューニングされ、のちのランサーエボリューションや、インプレッサの先駆けとなる一台だった。1988年の全日本ラリーCクラスのチャンピオン。
標準モデルも、マイナーチェンジで、2リッターのSRエンジンになり、パワーに余裕が出て、サスペンションもしなやか。キャッチフレーズどおり、なかなかの「グッド・カー」だった。
こうして振り返ってみると、日産の名車は、スカイラインやZ、シルビアなどのスポーツ系だけでなく、地味なクルマにも意外に多いことがわかるはず。最近は、無資格検査問題でいろいろ叩かれている日産だが、質実剛健のクルマ作りの気風こそ日産の強味。初代プリメーラのような、欧州車風の真面目なクルマ作りをすれば、必ず評価されるので、日産らしいクルマ作りに励んで、信用回復に取り組んでほしいと、多くの日産ファンが願っているに違いない。