値引きの限界額まで達しなかった場合は次の客の値引きにまわす
新車購入において値引き交渉はつきもの。とはいうものの世の中は広いもので、新車から値引きが出来ることを知らないひともいると聞く。現場のセールスマンいわく、「値引きの話を切り出したら、『クルマって値引きできるんですか?』と真顔で聞かれたことがあります」という。
今”値引きのプール”というようなものを行うディーラーも目立っている。前述したように、新車値引きにこだわらないお客への販売では当然のように、限界まで値引き額を拡大せずに受注となる。そこで、提示した値引き額と限界点の値引き額の差額を次回以降のお客の商談用にキープすることができるのである。
つまりA車の限界点の値引き額が20万円とする。あるお客が10万円引きでA車を購入したとする。この時点でこのセールスマンは10万円の値引き枠をプールしたことになる。そして同じセールスマンが、その次に値引きにシビアなお客を担当することになったとする。商談を進めていく間に希望車の限界値引きまで値引き額が拡大したが、お客はまだ納得がいかない様子。そこで、プールしていた10万円引きを使い、合計30万円の値引き提示することができるというものである。
セールスマンの実績評価には、販売台数がすぐ思いつくが近ごろでは“粗利をいくら稼いだか”というほうが重要な評価となっている。新車がよく売れたバブルのころも表面的にはより多く売るセールスマンが注目されていたが、その当時でも粗利での実績評価が行われていた。
“粗利”、つまりどれぐらい値引きを押さえて新車を売っているのかが、セールスマンのより重要な評価基準とされといるのである。今どきは新車販売も低迷しているので、いくら台数を売っていても極端な薄利多売をするセールスマンの評価はあまり高くないのが一般的である。
仮に店舗にひとりずば抜けて台数を売るセールスマンがいるとすると、その売り方(薄利多売など)もあるが、結局同じ店舗のセールスマンが登録関係書類の手配や納車準備でサポートに入ることになり、営業活動が思うようにできないことにもなるので、店舗全体でみるとかえって効率が悪いと判断するのが一般的なようだ。新車販売の世界もご他聞に漏れず“ひと不足”の状態なので、とにかく効率的な販売活動が求められているのである。
その意味で前述したような値引きのプール制などを採り入れて、セールスマン個々に粗利管理を意識させようとするディーラーが増えてきているのだ。
世の中は不思議なもので、値引きをやり過ぎたお客の次は、たいていあまり値引きにこだわらないお客との商談となり、自然とバランスが取れるようになるとのことだ。それを行き当たりばったりで行うのでなくコントロールしようというのが値引きのプール制といえるかもしれない。