リーフを上まわる走りの質感を見せた
2040年以降に導入するドイツ政府の電気自動車政策に呼応すべく、VWも着々とEVシフトを進めている。今回日本に入ってきたeゴルフは、欧州だけでなくアメリカなどで販売される世界戦略車種であり、切り込み隊長といったイメージ。ライバルをズバリ日産リーフに置いている。果たしていかに?
ということで、まずリーフと比較しておきたい。搭載されるモーターの出力は136馬力で、リーフの150馬力を少し下まわる。搭載されている電池容量も、リーフの40kWhに対し35.8kWhで、これまた少し下まわっていた。気になるJC08モードの航続距離はリーフ400km対308km。
JC08の場合、日本車が有利になるため、実際に数値に近いアメリカEPAの航続距離を調べてみたらリーフ240kmでeゴルフ200km。いずれにしろすべてのスペックでeゴルフはリーフに少しづつ届いていない。eゴルフの性能が低いと言うより、新型リーフのスペックをホメておくべきか?
Dレンジをセレクトして走り出すと「電気自動車ですね!」。ガソリン車だとエンジンフィールの差があったり、変速機の個性出たりするものの、モーターって静かなだけ。変速機なんか付いていない。もはや日本車とドイツ車の差など無し。新しい時代になったことを実感する。
また、ボディ剛性の差も感じない。電気自動車の場合、重いバッテリーを床下に搭載するためリーフだって驚くほど高い剛性持ってる。初代リーフをラリー車に改造したときなど、あまりの頑丈な構造のためボディ補強の必要性がなかったほど。輸入車のアドバンテージ、減りましたね。
ただ乗り心地はけっこう違う。リーフに使われている動きの渋い国産のダンパーが厳しい感じ。結果的に乗り心地の上質感という点でeゴルフ優勢。リーフもダンパーにお金掛けたら、これまた並ぶと思う。電気自動車の時代になると”差”はインテリアとエクステリアデザインということか?
絶対的な動力性能だけれど、スペックのどおりリーフに少しだけ負けている感じ。出力がリーフより10%ほど低いだけでなく、車重もリーフ1520kgに対しeゴルフ1590kgで重い。アクセル全開加速した時の「すげぇ速い!」感こそ共通ながら、リーフのほうが明らかにワンランク上。
回生の度合いはリーフより細かく選択可能だ。eゴルフの場合、基準の『D』レンジであればアクセル戻した際、コースティング(空走)するようになっている。実際、電費を最大限引き出そうとすれば、電車の如くコースティングさせ、ブレーキペダル踏んで回生する走り方がベスト。
テスラやBMWのi3がアクセル戻して強い回生を行っているのは、ブレーキ踏んだ時の協調制御技術(ブレーキペダルの踏力を電気的に計測し回生と油圧を最適に制御するブレーキバイワイヤと呼ばれる高度な技術)を持っていないためである。リーフの『eペダル』も、効率の良い協調回生を行えないための”逃げ”なのだ。
とはいえ『eペダル』のような制御が新しいと評価する人達もいるため、強い回生を行うことだって可能。アクセル戻した時の回生の強さを4段階(D1/D2/D3/B)から選べるのである。ドライバーのお好み合わせて乗ればよかろう。私なら瞬時も迷わずDレンジだ。アクセル戻して強い回生は、乗っていてリラックスできない。
以上、eゴルフの価格は499万円。電気自動車としての性能だけでなく、圧倒的な性能差を持つ自動ブレーキ付きリーフが399万円なので、輸入車に対するブランドイメージを持っていないと勝負にならないかもしれない。エンジンフィールに代表される輸入車としてのアドバンテージを持てない電気自動車は、なかなか厳しい戦いになりそう。