燃焼室容積と排気量によって決まる
圧縮比というのはエンジンにとって、とても重要なスペックです。ピストンがシリンダーのなかを上下に動きますが、その上限と下限の動きで生れる容積が排気量ということになります。そして上限の時にシリンダーヘッドとの隙間に生れるのが燃焼室で、圧縮比は(燃焼室容積)÷(燃焼室容積+排気量)という計算式になります。圧縮を高くするということは、つまり燃焼室を小さくするということです。
ピストンが上がっていくことで燃料が混じった空気を圧縮し、高温・高圧になり燃焼が可能になります。しかし、ピストンが下がっていく時、その逆に燃焼エネルギーを取り出すためのスペックでもあるんです。それを膨張比といいます。膨張比が大きいと燃焼エネルギーを十分に回転エネルギーへと転換することができますが、膨張比が低いと燃焼室内から圧力が高いまま排気されてしまうわけです。エンジンの熱効率が低くなってしまうんですね。
普通のエンジンでは、圧縮比=膨張比です。その図式を崩したのが、アトキンソンサイクルやミラーサイクルと呼ばれるエンジンです。圧縮比を高くするとノッキングが発生するガソリンエンジンは、圧縮比=膨張比が低く抑えられてしまいます。それを改善するために膨張比だけを高くしたのです。
具体的にいえば吸気量を少なくして、みかけの圧縮比を低くすることで実現します。だからアトキンソンサイクルやミラーサイクルでは、機械的な圧縮比がとても高くなるのですが、その目的は膨張比を高くするためなんです。
ディーゼルエンジンは低圧縮がトレンドになっていて、マツダや三菱では15以下になっています。あれっ? 低圧縮にすると低膨張比になって熱効率が低下してしまいますね。熱効率、つまりは燃費に目をつぶって低圧縮にしている? そんなわけはありません。