【当時乗った中谷明彦も注目】ヨコハマが復刻するアドバンHF Type Dってどんなタイヤ?

1980年前後の旧車スポーツモデル向けに現代技術を用いて復刻

 ヨコハマがかつて一世を風靡したスポーツタイヤ「アドバンHFタイプD」を復刻し販売を開始する。タイプDとはタイヤトレッドパターンのアウト側3分の1ほどと、ショルダー部にかけてスリック形状とした非対称のパターンを持つスポーツ性の高いモデルで、左右非対称タイヤ設計のパイオニアモデルになったとも言える。

 1981年に初登場するやいなや、サーキット走行などスポーツ走行に適したリプレイスタイヤとして圧倒的な支持を受け、世界レベルで高い評価を受けていたのだ。

HF TypeD

 近年、1980年前後からそれ以前の旧車ブームが再燃しており、そうした旧車オーナーなどから復刻版の再販を希望する声が高まっていたという。しかし、タイヤという製品はさまざまなサイズに対応しようとすると、それぞれのサイズ毎に金型を作らなければならないなど、採算ベースを維持することが難しい。だが、今年創立100周年を迎える横浜ゴムとしてはその記念事業の一貫として採算度外視で「タイプD」の復刻を決め熱いユーザーの声に応えるのだという。

HF TypeD

 基本的なユーザーターゲットは旧車モデルオーナーということで、復刻サイズも当初は50〜70の185〜225までの6サイズが計画されている。車種的にはS30型日産フェアレディZやトヨタ・カローラレビン/スプリンタートレノ(AE86)など車種的にも伝説的なモデルが適合する。今ではヒストリックカーとしても価値が高いこれらのモデルが履きこなすのに丁度いいタイヤが、現在のラインアップには乏しいことから、性能バランス的にも当時のレベルに合ったものが世界的にも求められていたという背景もある。

HF TypeD

  

 僕自身、タイプDが発売された1981年当時に試乗したり、記事を書いたりした記憶がある。丁度筑波サーキットなどで国産車のテストが行われるようになった時期でもあるが、当時は筑波サーキット最速だった初代マツダRX—7でもラップタイムは1分18秒程度。それがタイプDの登場により一気に2秒以上タイム短縮される時代へと突入していく。

HF TypeD

 ノーマルカーではコーナーで転舵したときにタイヤショルダー面に大きな負担がかかり、従来のタイヤではブロック剛性が弱くてステアリングを切り足す程にレスポンスが悪化し強いアンダーステアを引き起こしていた。しかしトレッドデザインの外側がスリック形状ということで、タイプDでは外側スリック領域でさらにCP(コーナリングパワー)が高まり高い旋回限界速度を引き出せるのだった。だが弱点もある。スリックパターン化によりランドシー比は悪化し、タイヤの排水性が落ちることからウエット路面には適さなかった。

HF TypeD

 そこで今回復刻モデルについて現代の安全基準との適合性についても開発担当の藤本廣太氏に聞いてみた。

「外観的なトレッドデザイン、サイドシルエットそしてプロファイルも当時の図面を参考に正確に再現しました。特徴的なトレッド面の格子模様もあえて再現したほどです。しかし認証に必要な・燃費・ウエット・通過騒音に対しては最新技術で適合させています」という。

HF TypeD

 デビュー当時はまだシリカの配合がなく、ウエットではグリップを発揮できなかったが、近年のタイヤはシリカをコンパウンドゴムに配合することでウエットでの吸着摩擦性能を高めている。そこで復刻モデルのタイプDにもシリカを配合。ブロックパターンのエッジ部はラウンド形状を持たせて経年変化によるひび割れを低減させるなど、最新技術を盛り込んでいるのだ。

HF TypeD

 また、「タイプDは欧州でも高い人気があり、復刻モデルを求める声が多く欧州のR117-02認証も取得しました」ということで、安心して使える近代的性能も身につけている。

「グリップレベルの設定は一番苦労しました。現在のスポーツタイヤ(ADVAN NEOVAなど)のグリップレベルは、当時のADVAN HF Type Dのグリップレベルとは比較にならないほど高くなっていますが、当時ADVAN HF Type Dを使用して頂いていた方々からは、ADVAN NEOVAのようなハイグリップを期待する声が多くありました。しかし旧車に装着していただくにはハイグリップ過ぎるとバランスが悪化してしまいます。そのため車両重量設定も当時の重量レベルを基準にグリップレベルを調整し、旧車につけても高性能でありながら本来の走行バランスを崩さないことに留意しました」とのことで復刻モデルとしては高い完成度で再現できたようだ。

HF TypeD

 ちなみにHFタイプDのHFはハイフィラーの略。これはタイヤのケーシングでサイドを構成する構造部材で現代に多くのタイヤがこのHF構造を引継いでいる。タイプDのDはディンプルを意味し、トレッドのスリック部に配置されたディンプルを指す。

HF TypeD

  

 発売は10月後半以降となる模様で10月24日から開催される東京モーターショーのヨコハマタイヤブーズでは現物の展示も予定されているようだ。近いうちに走行インプレッションもお届けしたいと思う。

ADVAN HF Type Dサイズラインアップ

225/50R15 91V
205/50R15 86V
185/60R14 82H
195/70R14 91H
185/60R13 80H
185/70R13 86H

 問い合わせ
横浜ゴム株式会社
0120-667-520


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

新着情報