「78時間スピードトライアルはもう二度とやりたやくない」
細谷「三日三晩210km/h保って走っているんですから、津々見さん、どうですか、もう一回やりたいですか?」
津々見「こんなに美しいクルマと一緒に走れるのは嬉しいことで、半分やりたい気持ちもありますが、私は辛かったですね、もっと簡単だと思いました」
細谷「お互い様。私は二度とやりたくないですね」
津々見「皆さん凄く良い走りをされて、最初は簡単だ、アクセル踏んでいればいいと思っていましたが、全然違いました。細谷さんが二度とやりたくないとおっしゃってびっくりしましたが、指示回転数が細かくあって、たとえば7250回転と言われてピタッと合わせて走るのが大変でした」
細谷「ハムスターがグルグル、回してますよね、同じ所を同じ回転数で走るのは非常に眠くなります」
津々見「なんで大変か。それは風や天気の影響あるから難しいんで、結構アクセルを微調整していました。それが疲労なんです。細谷さんをはじめとする方々はラップタイムを揃えてくるので、こちらも合わせて踏み込んでいくのが大変で辛かった」
細谷「そのクルマが50周年」
津々見「凄いですよね。レースに勝つために造ったGTカー。レースを目指して、レースで育って、それが市販される。フェラーリをはじめとしたメーカーのエリートスポーツカーはほとんどそういった生い立ちですが、2000GTがそういう環境で育ってきたのが凄い」
細谷「そういえば第1回、鈴鹿1000kmのときの話も……」
津々見「細谷さんが、ステアリングの長さを調整をして自分に合わせるので、そこが曲がって折れてしまい、私たちのチームは勝てたのですが、あのレースではほかに戦えるクルマがなくてライバルがトヨタ2000GTでしたね」
細谷「その後の、富士24時間とかいろいろありましたが、それは大体、細谷/大坪組で勝っていたけど、唯一負けた鈴鹿1000km。鈴鹿1000kmは今でもやっていますが、第1回鈴鹿1000km優勝の福沢/津々見組と書いているのに、2番手は載っていないんですよ。津々見さん、永久に残りますからね」
津々見「このクルマが、いまだに輝きを失っていないこと、トヨタチームのデザイン力、ヤマハのアイディア、卓越した技術力、本当にほれぼれします。オーナー様にはいまだにキレイに乗って頂き、感謝ですね」
細谷「トヨタ自動車のクルマで『このクルマ誰が作った?』 というのはじつはありません。ところが2000GTだけはそれがあって、河野部長と野崎さんデザインです」
津々見「プラス細谷さんです! 細谷さんの分身の気持ちがあるからいいクルマに仕上がったんですね。できたら、60周年のときも細谷さんにお越し頂いて」
細谷「元気があれば……(笑)」
津々見「足に不具合がありますが、顔色も良いですし少し細くなりまして、またお呼び頂ければと思います」
細谷「おかげで私も80歳になりました!」