曲がる4WDは珍しくないがそれでも4WDは曲がるのが苦手
2)フロントタイヤの仕事量が大きい
4WDということは当然フロントタイヤにも駆動力がかかる。つまりFFと同じように、コーナリング中のフロントタイヤは限られたグリップ力を横方向と縦方向でシェアする必要があるので、必然的にフロントタイヤの横方向の取り分が少なくなり、アンダーステア傾向を助長することになる。
とはいえ、先のトルクスプリット方式をはじめ、前後のトルク配分をバリアブルにコントロールしたり、三菱のスーパーAYCやホンダのSH-4WDのように、電子制御によるヨーコントロールデフなどを組み合わせ、キレイに曲げて、立ち上がりは4WDのメリットを生かして力強く加速するという4WD車も増えている。
3)重量配分と重量増
これまで語ってきた1)と2)については、デフの制御技術やタイヤの性能向上で、ほぼデメリットを解消しつつあるのが現状だが、4WDユニットの重量増だけは物理的にどうしても回避することは不可能だ。重いクルマは曲がりにくいし止まりにくい。さらに言えばタイヤの摩耗も早くなる。これは単純な物理現象なので、材料置換その他により4WDシステム以外のところで軽量化を図るしかない……。
もうひとつは重量配分の問題。
多くの4WD車はFFベースの4WDなので、もともとフロントヘビーなのに、そこに4WDシステムを押し込んだ結果、さらにフロントの慣性重量が大きくなりがち。フロントヘビーのクルマは、直進性の良さと引き換えに曲がりにくい、つまりアンダーステアの傾向がある。
これをカバーできるのは、タイヤの性能とヨーコントロールデフなどの電子制御技術。結論から言えば、日産GT-Rをはじめ、アウディR8、ランボルギーニガヤルドなど、“曲がる”ハイパフォーマンス4WDは珍しくなくなってきたが、原理原則に則ると、4WDはやはり曲がるのが苦手な駆動方式といえるだろう。