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【開発陣に直撃】新型トヨタ・カムリ開発の裏にあった「セダンの危機」

【開発陣に直撃】新型トヨタ・カムリ開発の裏にあった「セダンの危機」

北米で15年連続販売台数1位のカムリが抱く「危機感」

 世界100カ国以上の国と地域で販売され、累計販売台数が180万台を突破しているカムリは、米国では15年連続で乗用車販売台数の1位を獲得するなど、まさにグローバルな人気を誇るヒットモデルといえるだろう。だが、今回のフルモデルチェンジで開発責任者をつとめた勝又正人さんは、そんな人気ぶりからは意外と思える「危機感」というキーワードを口にする。

「国内マーケットのセダンの低迷は日本だけの話ではありません。アメリカでもセダンからSUVへとお客様が移行する潮流が生まれています。とりわけ日本では、40歳以下の方のなかには『セダンってどんなクルマのこと?』という質問をする方がいらっしゃるほど、セダンの存在感が薄れています。このままではセダンに未来はない。我々はそんな切実な危機感を抱いているんです」

 その危機感を打破するためには、カムリが先頭に立って変わっていくしかない。そんな決意を抱いた勝又さんら開発チームは、開発スローガンに「前例のない変革」を掲げ、プロジェクトに取り組んだ。

 その言葉どおり新型カムリの開発では、電子系などのあらゆる部品に至るまで、ゼロからの開発・刷新がなされている。

「我々はある意味、天の采配のような幸運に恵まれたと思います。トヨタの新しい設計思想であるTNGAに加え、プラットフォームやパワートレーンユニット、ハイブリッドシステムなどの刷新時期が重なったという幸運です。ここまで様々な領域での刷新が重なることは極めて稀です。我々エンジニアにとっては、やりたいことをとことん追求できる、まさに千載一遇のチャンスでした」

 前例のない変革を実現するための2つの柱となったのは「理屈抜きのかっこ良さ」と「意のままの走り」だった。

「ひと目ボレしてしまうようなロー&ワイドなプロポーションはSUVでは絶対に表現できないデザインです。低重心による高い運動性能も、セダンというボディタイプの魅力です。80年代のクルマにワクワクドキドキした経験を持つ50歳代のお客様には、あの頃のクルマの楽しさを思い出していただく。そしてセダンをご存知ない若い方々には、まずはこのスタイリングの良さを入口にして、セダンの良さに気づいていただきたいと考えました」

 一方の走りについては、先進安全機能の熟成も含め、実走行のテストを徹底的に繰り返すことで実現を目指した。

「意のままの走りの実現には、ドライバーが意図しない動きをクルマがしてしまうシーンを徹底的につぶすことが必要です。それは安全予防でも重要です。予防装置の動きがドライバーの意図とは違う動きになってしまうと、かえってヒヤリとしてしまいます。いかに違和感なく装置を働かせるか。そのためにも走り込みによる熟成はとても重要でした」

 今回の開発では、通常では考えられないほど早い段階から制御系システムの検討をスタートさせ、実走行のテストに、より多くの時間をかけられるようにしたという。

 こうして誕生した新型カムリ。勝又さんは、「これ以上はできないと思える会心の作」と胸を張ってくれた。

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