ターボが必要ないと思わせる新エンジンと軽量車体の組み合わせ
さて、新型N-BOXの運転席に乗り込めば、まずは運転のしやすさを実感。アウトホイールメーターのおかげで視線が常に運転視界にあるのに加え、極細化されたAピラー(先代の82mm径から55mm径に)が斜め前方の視界をほぼ遮らないからだ。そして分厚いクッション感ある、アコードのフレームを用いたシートのかけ心地の良さに感動だ。
ここで試乗したのは、どう見ても”犬顔”になった標準車、およびカスタムの58馬力/6.6kg-mを発揮するNA(自然吸気)モデル。
新エンジンはロングストローク化で燃費をかせぐ仕様というが、ロングストロークだとパワー的に不利。そこで上級機能としてS660でも採用されていない、ホンダならではの可変バルブタイミングリフト機構=VTECを採用してしまった。なんというぜいたくだ!!
ゆえに、走りだしから先代NAモデルとは比べ物にならないトルク感、力強さ、アクセルレスポンスの良さがある、中高回転まで回してもウルトラスムースかつノイズを押さえた加速性能を手に入れたのである。それはエンジンのおかげだけではない。車体の軽量化、CVTの改良、最終減速比の加速方向への変更……などの積み重ねによるもの。もはや高速走行の機会が少なくなくても、NAで十分! と言える動力性能を手に入れたのが新型N-BOX、新エンジンなのである。
しかし、それ以上に感動したのが乗り心地。先代型はハイトな車高による転倒の可能性に配慮したせいか、足まわりは硬く、乗り心地は決して褒められたものではなかった。が、新型は乗り心地に関しても劇的に進化していた。この14インチタイヤ装着車(標準車のNA/ターボ、カスタムのNA)は段差などでの突き上げ、荒れた路面でのザラザラ感、ビリビリ感を見事に解消。マイルドなフラットライドに終始してくれるのだ。これはもう、下手なコンパクトカーよりも(先代フィットよりも!)上級・上質な乗り心地と断言したい。
その理由のひとつがサスペンションのバネレートを25%落とした乗り心地重視の設定だ。しかしただバネレートを落としただけだと乗り心地はフワフワ、操縦性も心もとないものになる。そこでホンダの乗用系軽自動車初採用となるリヤスタビライザーを追加。カーブやレーンチェンジなどでのロールを押さえ、安定させる効果ばっちりである。
さらにコーナリング時のステアリング操作に対してVSAを用い、自動的に内側片輪にブレーキを軽くかけ、旋回をアシストし安定させるアジャイルハンドリングアシストという上級機能をふんぱつ。カーブでの安定感、前後バランスは、たとえばフリード並みと言っていいかもしれない。
新型N-BOXの完成度は極めて高い。内装の質感、走り、快適性を含め、それこそコンパクトカーキラーと言っていい上級感を備えている。最後に、街乗りから高速走行まで、別稿で紹介するターボモデルとの動力性能差が先代と比べ、劇的に縮まった事実も報告しておきたい。