掴むと悲惨! 素人には判別の難しい水没被害&雹害の中古車に注意

中古車として販売する際に「水没」や「雹害」の表示はされない

 今年の夏も日本全国は異常気象に見舞われた。ゲリラ豪雨や数十年に一度とも言われる記録的豪雨、さらに全国各地で雹害が発生するなど、まさに“異常気象の夏”であった。

 全国各地で発生した、豪雨による洪水や雹による被害はクルマにも当然及んでいる。洪水被害による水没、雹害によるボディへの損傷がそれだ。そして夏が終わると水没車や雹害車が下取り査定や買い取り、そしてオークション市場で目立ってくるというのである。

 2011年3月11日に発生した東日本大震災は東北地方を中心に甚大な被害を与えた。なかでも地震によって発生した津波被害は、その映像とともに全世界にショックを与えたのは記憶に新しい。この東日本大震災が発生してしばらくしてから、中古車市場などで目立ってきたのが、被災地で津波被害により水没した車両である。

 もちろん津波に流されてグシャグシャになったりした全損車両は再販不可能だが、車内に海水が入ってきたぐらいの軽度の水没車両について、車内清掃などをして走行に問題がなければ、その多くが中古車市場に流通していたのである。しかも被災地から遠く、震災被害の水没車両への警戒の低い関西から以西の地域で多く流通したとのことである。

  

 被災地に近い関東地区の新車ディーラーなどでは、下取り査定に際して“津波被害車両に注意”というような通達が出回ったところもあったと聞く。再販しようとするのだから、当然、車内清掃などが行われていれば、水没車両であったかの見分けがつけにくい。水没車両は、被害のない同型同年式車に比べれば、査定額は大幅ダウンするので、誤って査定すると大損してしまうので、注意喚起の通達が出ていたのだ。なお、中古車として販売するときには、水没車両や雹害車両であることをプライスボードなどに記す必要がない(というよりわからないまま展示していることも多い)こともあり、一般ユーザーが見分けるのは大変難しいのである。

 雹害については、雹により目視でボコボコにボディが凹んだクルマはそのままでは売れないが、粒の小さい雹による被害は目視ではわからないケースがある。かれこれ10年以上前になるが、日本で雹が頻繁に降るようになったころ、ある関東地区のディーラーでは雹害車両をしっかり見分けるため、雹は局地的に降るので、販売担当地区及び近隣で夏季に雹が降った地域をリストアップした資料を用意し、車検証の住所が当該地域かどうかを確認し、さらに目視できない雹害でも判定できる機械を導入して、下取り査定を厳密に行うディーラーが出てきた。

 今年の夏は全国くまなく水没被害や雹害が発生しているので、当然被害車両もかなりの台数にのぼっているはず。著しく販売価格が安かったり、いつもは展示場に並ばないような車両が展示してあったら、なんらかの被害車両と考えて念入りにチェックしたほうがいいだろう。水没車の場合は見た目では判別がつきにくくなっていても、水没による異臭は完全に消えないので、念入りに臭いのチェックをしたほうがいいだろう。雹害については、天気の良い日の太陽光の反射具合などでチェックするしか自力で確認する術はないようだ。

 ハイブリッド車両などは、水没被害後そのまま動くか動かないかは別として、ハイブリッドユニットすべてを交換することが大原則だが、車内清掃したら、そのまま動くのでそのまま中古車として流通させているケースもあるようだし、ハイブリッド以外でもやはり、一般車両に比べれば、トラブルに見舞われるリスクは高いので、たとえ販売価格が割安でも、“安物買いの……”になってしまう可能性がかなり高いのである。

 なお夏に水没被害や雹害に見舞われたからといって、秋に一気に中古車市場に出てくるというものではない。“そんなこともあったよなあ”といった具合に、水没被害などの記憶が薄れたころを待って放出してくることもあるので、年間を通じて流通しているものと考えて動いてもらいたい。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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