スカイアクティブXはガソリンとディーゼルエンジンのいいとこ取り
自動車産業が電動化に向けてシフトしているなか、マツダが発表した「スカイアクティブX」が話題となっている。究極の内燃機関と呼ばれる「圧縮着火(Compression ignition)エンジン」を実用化したと発表したが、早くもそれを実際に体感してきた。
8月8日に開催された「マツダ技術開発の新長期ビジョン説明会」で概要は説明されたが、圧縮着火エンジンとは「ガソリンと空気の混合気をディーゼルのようにピストンの圧縮によって自己着火させる」エンジンで、ガソリンエンジンの「出力/暖房性/排気浄化性」とディーゼルエンジン「燃費/トルク/レスポンス」のいい所取りのパフォーマンスを備えているのが特徴。しかし圧縮着火燃焼が可能な回転・負荷の狭さと圧縮着火/火花着火の切り替えが、実用化への高いハードルとなっていた。
だが、マツダは数々のブレイクスルーにより「圧縮着火の燃焼範囲の拡大」と「燃焼の切り替えの完全制御」に成功。それがマツダ独自技術「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」である。
これを実現させたキーワードは、何と圧縮着火では不要なはずの「スパークプラグ」だった。火花着火の領域で“仕方なく”使われていたスパークプラグを逆に圧縮着火のタイミングのコントロールのために使用……と言う逆転の発想を用いたのである。
更にシリンダー内の混合気分布偏在制御や異常燃焼を制御するためのリアルタイム補正や、瞬時に異なる濃度の混合気をミキシングできる超高圧燃料噴射システム(直噴ガソリンエンジンの約2倍~2.5倍)などのさまざまなブレイクスルーの結果、冷間時や高回転域を除くほぼ全域で圧縮着火を可能にしている。
試乗はマツダ3(アクセラ)にスカイアクティブXを搭載したテストカーで行った。じつはこのモデルはスカイアクティブXの搭載だけでなく、車体/シャシーは次世代プラットフォームで構成されている。つまり、マツダの近未来が凝縮されて言うと言うわけだ。
究極の内燃機関……と聞くと、今までのガソリン/ディーゼルと違ったフィーリングを想像してしまうが、実際に乗ってみるといい意味で“普通”である。
ただ、よく考えてみるとディーゼルのような初期応答性の良と、ライトプレッシャーターボのような低中速域の自然なトルク感の盛り上がり、そしてガソリンNAのような高回転まで綺麗に吹け上がる伸びの良さと、これまでのエンジンの美味しい部分が融合されている不思議な感覚で、まさに違和感のない違和感だ。
よりマツダ車で具体的にたとえるなら、アバルト124スパイダー(1.4リッターターボ)のトルク感でロードスターRF(2リッター自然吸気)のような扱いやすさ、そしてロードスター(1.5リッター自然吸気)の吹き上がりと伸びの良さがミックスしているようなイメージか。
個人的にはスカイアクティブXは「ロードスターは1.5リッターと2リッターのどちらがふさわしいか?」と言ったような議論に対して、終止符を打てるような存在だと感じた。