目と耳を結んだ延長線上にヘッドレストの中心をもってくる
正しいドライビングポジションは、安全で快適な運転のための決め手となる要素。ドライビングの司令塔、クルマの動きの座標軸になるドラポジの調整にこだわってこそ、一人前のドライバーといえる。そんなドラポジの調整のなかで、意外に軽視されているのが、ヘッドレストの調整。
ヘッドレストは、追突されたときのむち打ち症を軽減するための重要なツール。(財)交通事故総合分析センターの調査によると、交通事故全体の約32%が追突事故で、死傷者数でみると、約35%が追突事故となっている。
こうした追突事故では、追突したクルマの運転手の99.1%は無傷で、追突された側の運転手の約87%は軽傷。そしてその損傷主部位比率を見ると、頸部が91.8%を占めている。この追突事故による頸部の損傷は、いわゆる「むち打ち症状」と呼ばれるもので、後遺症にもなりやすく、完治しづらいダメージのひとつ。
ヘッドレストはこのむち打ち症低減に非常に高い効果があり、ヘッドレストが適正な位置に設定されていれば、追突事故時の頸部無傷率は約2倍もアップする。ただし、これは「ヘッドレストが適正な位置」に調整されていた場合の数字。適正とはいえない位置、とくにヘッドレストの高さが低く、頭から後方へ離れているケースでは、頸部無傷率は半減してしまう。
正しいヘッドレストの調整位置は、真横から見てドライバー(助手席&後席も)の目と耳を結んだ線の延長線上に、ヘッドレストの中心が来る高さ。角度が前後方向に調整できる場合、できるだけヘッドレストを後頭部に近づけて、頭とのクリアランスを狭くしておくとより安全だ。
近年は、より安全性を高めたアクティブヘッドレストの装着車が増えている。アクティブヘッドレストは、後方からの衝突時、乗員の体がシートバックを強く押すと内蔵のリンク機構が作動。ヘッドレストを持ち上げながら前傾させ、適切な位置へ移動させて頚部にかかる負担を大幅に軽減させるシステム。
これも非常に優秀な装置だが、上記のように、適正な位置に調整しなければ、宝の持ち腐れになってしまうので要注意。普段、調整を怠りがちになっているヘッドレストの位置調整だが、これを機にもう一度しっかり見直して、むち打ちを防止ししておこう。