フランスの辞書にも載っているルノーのグレードZENは日本語の禅が語源! (2/2ページ)

ZENは価格とのバランスがとても良好

 もちろんご存じの方も少なからずいらっしゃるだろうけど、そうでない方もZENという言葉の響きから、とても日本的な何かを連想されるんじゃないだろうか。そう、ルノーのZENというネーミングのルーツは、日本の“禅”にある。禅宗の“禅”、座禅の“禅”、禅寺の“禅”、だ。

ただ、フランス本国のラインアップにも当然ながら存在しているZENというグレード名は、日本語の“禅”からストレートに持っていったものというわけじゃない。じつはZENという言葉はフランス人の日常生活に完全に浸透していて、MANGAやKAWAII以上に一般的な、もはやフランス語の単語とすら呼べそうな存在。もちろん外来語としてフランスの辞書にも掲載されている。

 そもそもフランスは、高校の授業において哲学が必修科目となっている国。それは自主的に物事を考えて判断し、独立したひとりの人間としての“自己”というものを形成するための学問とされている。そういう考え方を下地にしているから “個”というものをとても大切にする国民性が生まれてきたわけだが、それはまた別の話か。

 ともあれ、哲学というものに馴染みのあるフランス人には精神性の豊かさを重んじる傾向が間違いなくあって、その先に日本という国を見てくれるようなところもある。日本の文化をリスペクトしてくれるフランス人も、だからとても多い。知り合いになったフランス人カップルに「“侘び”と“寂び”の正しい意味を教えて」といきなり訊ねられ、答えに困ったこともあるくらいだ。

 ZENという言葉は19世紀の終わり頃にはフランスの文献に登場しているようだが、ポピュラーになったのはそのほぼ100年後。今から20年ほど前のことらしい。Zazieというシンガーが歌った“ZEN”という曲が1995年にヒットしたのがきっかけなのだとか。歌詞のなかに「soyons zen(ソワイヨン・ゼン=穏やかでいようよ)」「restons zen(レストン・ゼン=穏やかなままで)」といったフレーズも出てきている。

 そんなところからも察せられるように、言葉の使われ方としては仏教由来の本来の意味からは少し離れ、“禅”の持つ世界観から「物静か」「穏やか」「落ち着きがある」「深みがある」「安らぎのある」のような意味のある形容詞として用いられている。つまり、心がいい状態にあること、精神的に豊かな状態であること、知的であることを表現するのが、フランス語としてのZENなのだ。

 ルノーがZENという名称をもっとも標準なグレードに与えたのは、だからなのだろう。そこには過剰さとは異なる豊かさがあり、心地好い平穏さに満ちたイメージがある。インテリジェンスも感じられる。そこに込められた意味合いは、想像以上に深いのだ。

 実際のところ、トゥインゴにしてもルーテシアにしても、それから今回のキャンペーンの対象ではないけどカングーにしてもメガーヌ・ハッチバックにしても、僕はZENが一番いいなと乗るたびに感じる。フランス車ファン達はフランスのクルマでもっとも味わい深いのはベーシック・グレードだというけれど、ZENはそれに一般的には必要不可欠であるモノをしっかり選んで与えたようなグレードであり、とても理性的な印象。そしてその状態と価格とのバランスが、とても良好なのだ。禅語の“知足(=足を知る)”が、そのままこのルノーのスタンダード・グレードに通じているかのようだ。

 ディスカバー“ZEN”キャンペーンの開催期間中、せっかくなのでルノーのディーラーを訪ねて、トゥインゴやルーテシアのクルマとしての面白さを体験するとともに、ZENに込められた精神性のようなものを少しばかり感じとろうとしてみてはいかがだろう? 芸術の秋、スポーツの秋、モノ想いの秋──である。

 【詳しくはこちら】

 HP:ディスカバー”ZEN”キャンペーン
問いあわせ:「ZEN VOYAGE キャンペーン事務局」zenvoyage@zeal-as.co.jp


嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
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