かのジウジアーロ氏も納得のスタイリング 1991年9月に発売され、2万4365台が生産されたアルシオーネSVXは、スバル ファンから奇跡の大傑作名車として崇められているが、一般的なクルマ好きからの評価は今ひとつ。クルマ雑誌などでも「デザインが良かった過去の日本車」的な企画でたまに思い出される程度にとどまっているので、この場を借りてその素晴らしさをアピールしたい。
まずは素敵でオシャレ、かつ重いテーマが込めらたネーミングから。「アルシオーネ」とは、スバルのマークである牡牛座の六連星の中で一番大きな星のことで(プレアデス星団の一番星)、名前からしてスバルのフラッグシップという意味が込めらているが、「SVX」はSubaru Vehicle X の略で、かつてない革新的なスバル車と解釈される。「SVX」の車名が決定したのは発売直前のことで、バブル経済が崩壊し、経営再建中だった旧富士重工業が新境地を切り開こうと渾身の開発を行った入魂車だったことを表している。
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そんなアルシオーネSVXの注目すべきポイントは多岐にわたるが、ここでは
・ジウジアーロ氏も納得した原案デザインの再現
・技術革新を要した全面3次元ラウンドキャノピーの実現
・高度な操縦性と耐久性、そしてラウンドキャノピーにも対応した高剛性ボディ
・完全バランスを追求した3.3L水平対向6気筒NAエンジン
・FRの回頭性と操舵感、AWDの安定性を備えたVTD-AWD
の5つを特筆ポイントとして挙げたい。
スバリスト以外からも評価の高いエクステリアデザインは、1986年にジョルジェット・ジウジアーロ氏率いるイタルデザインに打診し、数案のスケッチのなかからもっとも空力に優れ、スバルらしさを表現しやすいと判断された「クーポラ」というデザイン案がピックアップされたことに始まる。「クーポラ」とは、ウインドウからルーフがドームのような形状で、ラウンドキャノピーと呼ばれる三次元ガラスで構成する斬新な案だ。
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初期段階では初代レガシィベースの5ナンバーサイズボディだったものが、搭載エンジンが当初の予定だった4気筒から新開発の6気筒となり、それに見合うサスペンション設計や居住空間の確保のためにボディを拡幅。さらにラウンドキャノピーの生産性、とりわけ三次元カーブガラスの量産が困難ななかでオリジナル案そのままというわけにはいかなかったが、良い妥協点を見出してジウジアーロ氏も納得するスタイリングを再現した。
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ジウジアーロ氏の長年のパートナーであり、日本メーカーとのコラボの際は通訳としても活躍した宮川秀之氏の父は中島飛行機に勤務した経緯があり、宮川氏はスバルデザイン部の上層部に知人が多かったことも、スバルとイタルデザインの共同作業が上手くいった要因のひとつとされる。ジウジアーロ氏は宮川氏とともに開発中に何度も群馬を訪れ細部をチェックしたなど、単にデザイン工房として原案を提供しただけではなかったのだ。スバル・アルシオーネSVX 画像はこちら