【美人自動車評論家】吉田由美の「わたくし愛車買っちゃいました!」その26
メルセデスベンツ新型Sクラス発表会で感じた「安全」に対する個人レベルの意識改革
メルセデスベンツの発表会は東京・六本木にあるメルセデスベンツ・コネクションで行うことが多いのですが、主要モデルの場合、気合を入れて違う場所で行われます。ちなみに昨年発表された「Eクラス」のときは東京・赤坂の迎賓館。そして今回、フラッグシップモデルの新型「Sクラス」は、会場を事前に知らせず、行ってからのお楽しみという「ミステリーツアー」スタイル。
カーテンを閉め切ったままバス移動で約1時間半。着いた場所は開通前の東京外かく環状道路の工事現場。さすが、フラッグシップモデルのお披露目だけに、趣向を凝らした発表会です。発表会は、メルセデスベンツの現行ラインアップが次々に登場し、そのなかには私の愛車と同じ「CLAシューティングブレーク」のクーペモデルも。そして最後に登場したのが新型「Sクラス」。
新型Sクラスでは、6500もの部品を刷新し、トピックも盛りだくさん。見た目で大きく変わったのはヘッドライト。光ファイバーの3本のラインでインパクトがあります。リヤのランプの満天の星空の輝きをイメージしたという「クリスタルルック」は、650m以上も先まで照射するとのこと。しかもドアロック&解錠の際に、流れるライト。
そしてSクラスの歴史は、メルセデスの安全の歴史でもあります。1978年のABS搭載以降、エアバック&シートベルトテンショナー、ESP、ディストロニック、PRE-SAFE、インテリジェントドライブ……。最新装備はまずはSクラスに導入され、その後、メルセデスベンツのすべてのモデルに展開されていきます。
新型Sクラスに新たに搭載された主なものは、「アクティブステアリングアシスト」を追加した「インテリジェントドライブ」。車線のカーブ先行車、車線が不明瞭でも対応する車間を維持しながらステアリングをアシストします。
「アクティブレーンアシスト」は、ウインカーを操作するとその後はクルマが車線変更してくれるもの。
「緊急回避補助システム」では、衝突の危険を検知したときに、ドライバーのステアリング操作をアシストします。
そして「PRE-SAFEサウンド」。車両のスピーカーから音を出して衝突時の鼓膜損傷を防ぐもの。メルセデスベンツ初の機能としては自動駐車の「リモートパーキングアシスト」。これにより縦列、車庫入れ駐車が車外から可能。テレマティクスサービス「Mercedes me connect」の導入で、おもてなし度もアップです。
エンジンはガソリン3リッターV6直噴ターボエンジン、S560ロングとS560 4MATICロングには休筒休止機能付き新型4リッターV8ツインターボエンジン、6リッターV12ツインターボエンジンの3タイプ、7モデル展開。
しかし、私はこの発表会で非常に残念に思ったことがひとつ。この話は、改めて問題提起します! 取材する側の人たちの安全に対する意識です。というのは、発表会場に向かうバスのなかで、シートベルトを装着する人がかなり少ない。
これ、プレスバスですよ! 私の隣の人も、前後の人も装着せず、私から見える範囲でシートベルトを装着している人は、わずか一人。しかし、知っている方なら私も冗談交じりでシートベルトの話に触れられますが、知らない方ばかりなので、おそらく自動車専門誌やフリーランス以外の方だとは思いますが、静観していました。
この方々は、少し前の高速道路でのバス事故なども取り上げているはずなのですが、伝える側の人がシートベルトを装着していないとは、どういうことでしょう? 堪り兼ねた私は、敢えてそのことをブログに書き、更にSNSでも展開しました。おかげさまでそれを読んだ方からは大きな反響がありましたが、問題は見ていない方。
つまり私のことをご存じない方。帰りのバスのなかでは、周囲の方にやんわりシートベルト装着を促しまし、それを耳にし、気づいた方は装着してくれましたが、ある方からは「怖いお姉さん」と言われる始末。でもこれ、「バスの運転手さんが言わなかったから」とか「メルセデスベンツの人が促さなかったから」という問題ではありません。
クルマに乗ったら全員シートベルト着用は、とくに自動車関係の仕事をする人ならその意味も必要性も、シートベルトを装着しないと事故の被害が大きくなり自分が第三者に危害を加える可能性があるということも、重々承知しているはず。
クルマに乗ったら、まずはシートベルト装着というのは自分の命を守るということでも、まわりの人の命を守るという意味でも基本中の基本。このときにシートベルトを装着していない方は、日常生活のなかでもタクシーなど後席に座った時にもシートベルトを装着していない可能性が高いと思われます。
新型「Sクラス」の世界最高で最新の安全装備は、シートベルトを装着しているからこそ。せっかく世界一安全なクルマを作っても、使う人の意識が低ければ先進安全装備の効果は発揮できません。そう考えるとこの時、シートベルトを装着しない人達は安全性をウリにする新型Sクラスの発表会に泥を塗っているとしか思えません!
そんな人たちがクルマの安全面のことを書いても説得力が無く、さらにそんな安全意識の低い人を乗せてしまった運転手さんが可哀想。シートベルト非装着の場合、ドライバーが処罰されるのではなく、対応していない本人が罰金などのペナルティを負うべきだと私は考えます。そして、安全意識に関しては、技術が進歩に関係なく、改めて再教育が必要ではないかと思います。