【世界の名車】消滅が噂されるランチアの代表作「デルタ」 (2/3ページ)

1995年に惜しまれつつも生産終了

 1989年のシーズン途中で発表された”デルタHFインテグラ-レ16V”も、もちろんその法則に則って開発されたモデルである。名称どおりパワーユニットが16バルブ化され、タービン、インタークーラー、インジェクターなどが変更されて、最高出力はいよいよ200馬力に。

そして0-62mph(約100km/h)加速タイムは5.7秒、最高速度は220km/hへとパフォーマンスアップを果たしている。エクステリアでも目立つバージョンアップが行われていて、エンジンルームのクリアランスを大きくとるためにボンネットに膨らみが持たされ、またヘッドライトまわりやバンパーまわりなどに冷却孔が可能な限り設けられるようになった。

そしてこれが重要なことなのだが、トレッドが拡大され、よりワイドなホイールを履き、さらには4WDシステムの駆動力配分がそれまでよりFR寄りになったことで、コーナーでの回頭性が高まった。より”曲がる”クルマへと変化したのだ。ラリーのためのベース車両という意味合いでももちろんだけど、ロードカーとしての楽しさも大幅に増していたのである。

 その後、デルタHFインテグラーレは、1992年にさらにワイド・トラックになりブリスター・フェンダーも拡大されるなど大幅に進化した”デルタHFインテグラーレ16Vエヴォルツィオーネ”に、1993年にはエヴォルツィオーネの210馬力から215馬力へとパワーを上げつつ出力特性を変えるなど細かな変更を受けた”デルタHFインテグラーレ16Vエヴォルツィオーネ2″と発展し、ラリーへのワークス参戦をやめた後も一定以上の人気を保ちながら、1995年、惜しまれながら生産中止となる。

 以来、ランチア・ブランドからはモータースポーツで活躍するクルマは生まれてきていないし、スポーツ・モデルそのものも生まれてきていない。

 そういうこともあるからだろうか、昨今、いわゆるヤングタイマーと呼ばれる世代のクルマ達が脚光を浴びたなかで、世界的にもっとも早く価値が認められ、もっとも早くもっとも激しく流通相場が値上がりしたのは、このランチア・デルタ・インテグラーレだった。

 ランチア・ブランドの終焉がこれまで以上にリアルに感じられるタイミングであることもあって、ファンとしてはとても複雑な心境なのだ。


嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
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