完全に水に沈まなくてもダメージは大きい
ゲリラ豪雨、大型台風など日本の天候が変化していることを実感する昨今だ。急激な降水量の上昇は、雨水の処理能力を超えてしまい、治水対策が取れていないと河川が氾濫し、いわゆる洪水を引き起こしてしまうことも少なくない。
そうしたあとに生まれてくるのが、いわゆる「水没車」だ。水没という言葉から海や湖などに落ちるなどして全体が水に浸かった状態を想像してしまうかもしれないが、クルマの場合は床上浸水レベルでも「水没車」と呼んでいる。
その理由は単純で、洪水のような泥水が床上浸水となり、車内に侵入した状態になると、修理が難しくなり、ほぼ廃車になってしまうからだ。つまり「水没車」という言葉には修理が難しいレベルの状態といったニュアンスも含まれている。
プールのようなきれいな水に浸けただけであればキレイに乾かせば復活するかもしれないが、泥水が車内の細部にまで侵入してしまうと修理は難しい。無論、超高級車や貴重なクラシックカーであれば修理することになるが、それは莫大な修理費に対してクルマの価値が上まわるから。一般ユーザーが乗っているようなクルマでは、修理代が車両価値より高くなるために、技術的に直せたとしても金銭的な理由から廃車にすることが多い。
言い方を変えれば、修理するよりも同等の中古車を買ってきたほうが安いということである。ではなぜ、洪水による水没車の修理が難しいのかといえば、泥が染み込んだカーペットやシートはクリーニングでは臭いを取ることが難しく、室内パーツの多くを交換することが必要となり、また電気系のコネクターなどに詰まった泥の除去まで考えると、非常に手間(人件費)と部品代のかかる作業になってしまうため。
さらにエンジン内部に泥が入ってしまった場合は、オーバーホールレベルの修理が必要となる。前述したようによほど貴重なクルマでないかぎり、床上浸水レベルであっても「水没車」を修理するのは非現実的なのだ。