生活がかかっていないから純粋にレースを楽しめた
14年ぶりに公式戦復帰となったドリキンこと土屋圭市さん。日本の“ハコ”レースの最高陣と言われるスーパー耐久の第3戦(鈴鹿)、第4戦(オートポリス)にシビックTCRで参戦。レースレポートはすでに掲載されているが、今回は参戦に至った経緯やレースでの裏話などを聞いてみた。
そもそも、今回の参戦に至った経緯は?
「春先にホンダから『シビックでS耐に参戦するのでドライバーとして出てほしい』と頼まれたの。その時は『全戦走って欲しい』と言われたけど、オレのスケジュールと照らし合わせると、当初オートポリスだけ……。鈴鹿は急遽スケジュールが空いたので乗ることができた。オレのなかでは仕事は大きい小さいではなく、先に頂いたほうが優先。現役を引退して少しはゆっくりできると思っていたけど、14年経ってもスケジュールがビッシリで忙しいのはホントありがたいことだよね」
そう言えば、以前取材をお願いした際に、取材日にあとからGTのテストの予定が入ったことがあった。土屋さんに「スケジュール変えましょうか?」と聞くと、「いや、最初に受けているから……」と、取材を優先しテストには遅れて合流したのを覚えている。土屋さん、ホント義理がたいのだ。
今回参戦するに辺って、トレーニングなどはしたのだろうか? あの土屋圭市とは言え、年齢は61歳(!)である……。
「何もしてないよ(笑)。ただ、強いて言えば以前人間ドックを受けて、実年齢より若いと言われて喜んでいたけど、肺だけ80歳代と言われて……。なので、好きだったたばこを電子タバコにして、食べ物なども含めて少し健康に気を使うようになったかな」
では、現役復帰して感じたことは?
「現役時代は生活も掛かっていたし、成績次第では来年自分のイスがないかもしれない……と言うプレッシャーもあり、一度も楽しいと思ったことはなかったけど、今回はそんなしがらみは一切なく、純粋にレースを楽しめたのが嬉しかったよね」
実際に乗ったシビックTCRはどのようなクルマだったのですか?
「ノーマルモデルと同じで基本的にアンダーが強いのと、思ったよりパワーがないのが気になるものの、基本的には乗りやすいクルマ。レーシングカーと言うよりも、良くできたチューニングカーと言った印象だね。現状はどのコースもほぼブッツケ本番のような状態だけど、セットアップが進めばもっといいクルマになると思う」
そんななか、土屋さんは現役時代を彷彿とさせるドライビングで、時には現役ドライバーを上まわるタイムを記録。職人ドライバー・土屋圭市を垣間見ることができた。事前練習なしにいきなり走ってそんな芸当が可能なのか?
「そりゃオレ運転うまいもん(笑)。と言うのは冗談で、普段カートップやホットバージョンなど色々な自動車メディアでクルマにたくさん乗っていることが大きいね。短時間でそのクルマの素性を確認、そのクルマの性能を最大限活かせる走らせ方を見つけてタイムを出す……と言うような事を毎日やってきたことが、結果として今回のレースでも活きているんだと思っている。仮にセットアップが決まらないのなら、そのクルマなりに合わせた走りに変えればいいだけの話」
鈴鹿/オートポリス戦共にトラブルで表彰台を獲得することができなかったが、今後もレーシングドライバー・土屋圭市を見る事はできるのだろうか?
「今年はこれで終わりだけど、久々のレースシーンに戻っていいメンバーにも恵まれ“いい刺激”をもらったので、オファーがあれば乗るよ!! 表彰台のてっぺんに乗る気持ち良さも味わいたいし……ね」