自由参加の優良個人タクシー事業者認定制度
街中を走っているタクシーの行灯などに星印がついているのを見かけることがあるだろう。これは一般社団法人全国個人タクシー協会が行っている「優良個人タクシー事業者認定制度(通称マスターズ制度)」によるもの。マスターズ制度は個人タクシー事業者の自由意志で参加するものとなっている。
参加講習を受けたあと、マスターズ制度へ参加する意思表示を行い、各支部の「マスターズ運営委員会」の審査を経て、まずは「★(ひとつ星)」が認定される。その後「★(ひとつ星)」にて1年間以上、認定基準に抵触していない場合「★★(ふたつ星)」が認定される。
さらに「★★(ふたつ星)」にて1年以上で「マスター申請」が可能となる。そしてマスターとして認定されると称号ステッカーとマスター屋上表示灯が貸与されるというもの。このマスターの資格有効期間は1年で毎年更新申請が必要となる。
マスターズ制度のねらいは、タクシー事業者としてのサービス向上をねらうとともに、ドライバーレベルの「可視化」をすることで、より安心して利用してもらうこともねらっているようだ。
マスターズ制度は個人タクシー事業者向けの評価制度だが、法人タクシー向けには、たとえば東京タクシーセンターでも評価制度を設けており、「接客・サービス」、「安全・運行管理」、「経営姿勢」などを100点満点でタクシー評価委員会が評価し、合計評価点が76点以上になると優良事業者として認定するというもの。
また各タクシー事業者でも、ドライバー個々を独自に「優良ドライバー」として評価する制度を実施しているところもある。タクシー業界があの手この手でこのような評価制度を実施する背景には、依然として利用者の間で漠然としたタクシーに対する「不安」があるのも確か。
とくに女性利用客は、まだまだ男性ドライバーが多いので、一定時間を見知らぬ男性と限れたスペース(車内)で過ごすことへの抵抗感は強いと聞く。このような不安を少しでも払拭してもらい利用拡大につなげるのには、今回紹介したマスターズ制度や優良事業者認定制度は効果的なのである。
またチケット利用客など、大口顧客開拓にもこのような制度は営業ツールとして効果があるとされている。ドライバー側にとっても、ドライバー個人が「優良」と判断されれば、法人タクシーならば所属タクシー会社や会社が所属する無線グループなどから、「お得意様」対応ができるようになったり、上客の多いタクシー乗り場などへの乗り入れが許されたりと特典も多くなり、収入アップにつながるようである。
日本のタクシーのサービルレベルは間違いなく世界でもトップレベル。優良認定を受けていないドライバーや事業者であっても、原則チップなしでここまできめ細かいサービスの提供をしてくれるのはまさに「贅沢」といっていいだろう。