【今さら聞けない】タカタ問題とは何だったのか?

世界で1億個のリコールとも言われるエアバッグ異常破裂問題

 多くのメディアで報道されているように、エアバッグやシートベルトの大手サプライヤー「タカタ」が民事再生法の適用を申請、事実上、戦後最大級の倒産劇となった。

 日本国内では2015年から始まった大量リコールによって問題が表面化した「タカタのエアバッグ欠陥問題」。そもそも交通事故時の被害を軽減するためのエアバッグが、作動時の異常破裂によって金属片を撒き散らし、その破片によって死亡事故が起きるという問題だ。

 なにもないときに異常破裂をするわけではなく、エアバッグ作動時に異常破裂が起きるということで、その原因解明に時間はかかった面もあったろう。

 しかしながら、乗員を守るためのエアバッグが攻撃性を持ち、あまつさえ乗員を死亡させるほどというのだからセンセーショナルな問題である。通常、自動車のリコールというのはメーカーが行なうもので、サプライヤーのパーツに問題があったとしてもその名前が表に出てくることは少ないが、そのセンセーショナルさがタカタというサプライヤーの名前を前面に出すことになったのだろう。

 エアバッグの大手サプライヤーというのもあったであろうし、サプライヤーでありながらチャイルドシートではメーカーとして、その名前が知られていたことも影響したことは言うまでもない。エアバッグ、シートベルト、チャイルドシートといった安全を守るべきパーツを生み出す大手メーカーが、本来乗員を守るべき際に攻撃してしまう製品を作っていたというのだから、そのインパクトたるや大きかった。

 とはいえ、ユーザーのネガティブイメージがそのままブランド力を低下させ、事実上の倒産につながったわけではない。基本的にはサプライヤーであるから、たとえ大規模リコールの費用負担をしたとしても、自動車メーカーとの取引が問題なくつづけば企業は存続しただろう。タカタが企業として立ち行かなくなったのは、タカタにとってお客に当たる自動車メーカーに「見切り」をつけられたことにある。とくに強い関係にあると見られていたホンダが、早々に支援しないことを表明したことは大きく影響したと考えられる。

 そのホンダによるエアバッグに関するリコールの説明は次のようになっている。『インフレーター(膨張装置)において、環境温度および湿度変化の繰り返しによりガス発生剤が劣化することがあります。そのため、エアバッグ展開時にインフレ-ター内圧が異常上昇して、インフレーター容器が破損するおそれがあります。』

 問題発覚から現在に至るまで、リコールの原因となったガス発生剤(火薬)の劣化について故意であったという話はない。耐久試験などの条件付けが甘かったといえばそれまでだが、自動車という命を預かる製品作りにおいては安全というファクターが譲れない価値を持っていることを、タカタという老舗企業の破綻は示している。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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