クラス優勝を目指すチームを支えた6名の精鋭たちの奮闘記
ニュルブルクリンク24時間レースで、チェッカーまで残り3時間でマシンから出火。残念ながらリタイヤととなってしまったSTI。過酷なレースに挑んだWRX STIを支えたメカニックのうち、6名が全国のディーラーから選抜されてドイツへ派遣されたのだ。
じつはスバルのディーラーメカニック派遣の歴史は長く、一番古くは1990年のサファリラリーまで遡る。2001年を除き、2003年までWRCへ派遣。そして、2008年から参戦しているニュルブルクリンク24時間耐久レースへは、2010年より派遣が続いている。これまで、のべ357名のメカニックが世界の舞台で活躍をしてきた。
今年、ニュルブルクリンクという戦いの場へやってきたのは6名。北海道から大阪まで、事前審査に合格した精鋭たちだ。彼らは普段、一般ユーザーの入庫車の整備や、最適なメンテナンスプランを提案するディーラーマン。今回はタイヤ交換&管理を任されており、決勝中もマシンの作業に関わるという、重要な役割を担っていた。
北海道スバルの横井洋平さんは、3年前に応募し、念願叶って参戦となった。担当は左フロントタイヤだ。 「モータースポーツが好きでしたので、いつかは挑戦したいと思っていました。市販車ベースではありますが、レースマシンはやはり別物です。緊張も楽しみに変えながらサポートしてきましたが、リタイヤとなってしまって残念です。ですが、いろいろな経験ができたので、今後の仕事にも活かしていきたいです」とコメントしてくれた。
レース中に実際の作業を見学していると、6人が見事に連携し、スムースに作業を行なっていく。まるでレースメカニックのような手際の良さだが、作業後は次に活かすため、すぐにチームでミーティング。向上心とチームワークの良さに驚かされる。
長年チームを支えるSTIのとあるスタッフの方に話を伺うと、 「日本では数えるほどしか顔合わせをしていないはずなのに、ニュルに来てすぐに高いチームワークを発揮するんです。これは今年に限ったことではなく、毎年同じなので驚きます。スバルのディーラーメカニックのレベルの高さを実感します」とコメントしたほどだ。
それ以外にも外したホイールの清掃、新しいタイヤの組み付け依頼など休む間もなく動き続ける。明け方に周回遅れのマシンに接触され、マシン左側が大きく破損してしまう。ドアが閉まらなくなってしまうというトラブルが発生するが、突発的なアクシデントにも即座に対応。最小限のロスでコースへ戻すために貢献する姿は、もはや立派なレーシングメカニックだった。
世界一過酷と言われるコースを走り続けるWRX STIで得たノウハウが市販車へ活かされるのと同じく、厳しいレースで得た経験は今後の通常業務に活きてくるはず。スバルはクルマのみならず、ユーザーカーのメンテナンスをするメカニックも鍛えているのだ。
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