室内装備のデジタル分野が進化した
乗り味に関する変更は、今回は施されていません。VWより説明は受けたが、だとすれば作り込みの質が高まった結果なのだろう。2013年に日本導入された7世代目となるVWのゴルフは、コンパクトカーのカテゴリーに属しながら、ミドルセダン並みのしっとり感や上質な乗り味を備えていた。その質が試乗した限りさらに向上していた。
これは言葉では容易に記せるが、それを実現したのは凄いこと。軽量なモデル、コンパクトなモデルは、路面の凸凹などのギャップで足まわりが動こうとするが、クルマごと跳ねあげられるので乗り味に落ち着き感がなくなりやすい。それを嫌って柔らかく足まわりを設定すれば、高速安定性や旋回力が損なわれる。そんな定説が通じない、不思議なほど落ち着いた乗り味を備えているのだ。
ちなみにVWゴルフのモデルサイクルは思いのほか短く、最近では5年前後でフルモデルチェンジ。だからこそ今回の変更はもしかしてフルモデルチェンジ? と推測もしたが、蓋を開けたら俗に言うマイナーチェンジだった。しかし、単にマイナーチェンジと片付けるには勿体ない進化だ。
まず主軸として進化・強化が施されたのがデジタル分野。そもそもゴルフのモデルサイクルの短さは、世界のコンパクトカー市場を圧倒的な商品力で引っ張り続けるゴルフの意地、ブランド力の源を守るために定期的な大幅商品力向上を狙った結果とも言える。
それを踏まえると、今市場をリードし続けるなら、日々進化をする最新デジタル技術を導入することが大切だ。逆に言えば、今までのクルマの価値観である走りなどは定評があるので、基本手付かずとも読み取れる。
具体的に見ていくと、まず外装はオーナーでなければ即座には見わけられないだろう。ヘッドライトが若干切れ長になり、LEDヘッドライトを採用。リヤコンビネーションランプもLED化されてされ、ウインカーライトが内側から外側に流れるように光るシーケンシャルタイプになった。知っていればわかるこのような外装違いに対して、室内の変更は明確。
まず運転席の目の前に12.3インチモニターが鎮座され、そこにスピードメーターやタコメーターがデジタル表示される。その中央にはナビゲーション表示ができるなど、デジタルの強みである表示の多様性をもたせている。
実際に使うと、メーターのデジタル化は大歓迎だし、見た目や高級感の観点ではセンターモニターも歓迎だが、使用頻度の高いナビゲーションのスケール変更など若干使い辛く感じる操作性は今後の改善項目だろう。
また今は採用したことに価値がある新機能のジェスチャーコントロールは、まだ実用性の観点では赤ん坊だ。モニター直前での指の動きに反応するが、それであれば画面に触れて操作したほうが……と思ってしまうのがその理由。それを踏まえると、デジタルメーターこそ今回の変更の価値となるが、もう一つじつは注目がある。
運転支援機能の強化がそれだ。緊急ブレーキ機能が歩行者にも適応されだしたこと。さらには渋滞支援機能(トラフィックアシスト)が大きく進化。とくに車線の白線読み取りのレーンキープとレーダークルーズ機能で渋滞中の運転疲労度は大きく削減されるはず。ちなみに限られた場面でしか試せていないが、その際のハンドル操作はとても自然な感触で積極的に使いたい内容に仕上がっていた。
このようなデジタル分野での進化に加えて、冒頭で述べたオフィシャル的には変更がないと言われながら洗練されていた乗り味にも価値を感じたのでお伝えしておこう。