後輪駆動の乗用車では世界初の10速AT
このエンジンと組み合わせるのが、新開発の「Direct Shift‐10AT」。10速ATは後輪駆動の乗用車としては世界初で(ピックアップトラックで存在)、加速中のシフトタイミングを一定間隔とできるよう従来の8速AT比で1-4速をクロスレシオ化したもの。
リズミカルで切れ味のいいシフト(変速)のために、油圧制御部は高応答小型バルブボディに高応答小型ダイレクトリニアソレノイドを組み合わせている。クラッチ圧制御とパワートレイン統合制御を行なうことで、Dレンジの変速時間が約0.2秒、Mレンジでは約0.1秒というクラストップレベルの変速時間を達成した。
レクサスらしいエレガントな走りとダイレクト感のあるドライブフィールのために、発進機構はトルクコンバーターと多板式のロックアップクラッチの組み合わせとしている。DCTも変速の早さやダイレクト感ではトップレベルにあるが、発進や低車速でのゴーストップの自然さでは摩擦クラッチの制御がしばしばウイークポイントとなってしまう。
新型のDirect Shift‐10ATは、クリープや発進の初期は流体機構を使い、走り出したらロックアップ状態となる。このとき、従来方式のままではこもり音が出てしまっていたが、回転振動を吸収するダンパーの性能をしっかり確保し、エンジンマウントやディファレンシャルマウントの改良といったプラットフォームレベルからの見直しで、ほぼ全域でのロックアップを実現できた。
多段ATでは、ギヤ段が増えることでのサイズアップや内部のフリクション増加が問題となりがちだが、この10速ATは、8速ATとほぼ同等の体格をキープ。トルクコンバーターは高性能小型トルクコンバーターを新採用して、8速ATに対して、外径および軸方向の小型化が図られている。
内部フリクション対策では、別軸オイルポンプによる駆動ロス低減、変速部のクラッチやブレーキへの低損失型のフリクションプレート採用などによりドラッグ(引き摺り)を大幅に低減。軽量化対策でも、フロントのアルミキャリア、樹脂オイルパンが効果を発揮している。
シフト制御の基本的な考えは、ハイブリッドと共通で、ドライビングのリズムを作るための基本的で重要な要素と捉え、燃費最優先ではなくドライバーの意思や走行シーンをクルマが感じ取り、気持ちに寄り添うAI制御を導入。Dレンジのままでも幅広いドライビングスタイルに合わせたシフトを行なう。
穏やかに走行しているときは燃費重視のシフトだが、ワインディング路やサーキット走行のようなタイヤの摩擦円を大きく使っているシーンでは、DレンジでもMT操作でギヤ段を選んだかのような加速レスポンス重視のシフトを実現。さらに、Sport S+モード、Sport Sモードではよりアクティブに作動するようになり、パドルシフトを操作しなくても意のままの走りを提供してくれる。