人材不足問題に少数でも対応できる機器と女性確保の両面から対応
ぶつからないブレーキ、レーンキープアシスト、そして完全なる自動運転の開発……。ガラケーからスマホへの移行でライフスタイルがイッキにかわりつつ世の中、自動車の進化も日進月歩で、毎日にようにさまざまな「自動化」の最新テクノロジー実用化されている。
そんな自動車の進化に合わせるように、自動車整備の世界も大きく変わろうとしている。日本でもっとも歴史ある整備業界のイベント「第35回オートサービスショー」が6月1日より3日間、東京有明のビッグサイトで行われた。第1回はなんと1948年(昭和23年)の開催であり、当時の名称は「自動車機械工具実演展示会」だったが、第10回となった1973年から現在の名に改称している。
今回のイベント取材を通じて感じたキーワートは、ズバリ「人材不足をどう補うのか」。もう少し具体的にいえば、IoT(すべてのものや事象がデジタルでつながる)の導入と限られた人材を最大限いかすこと。人材不足は宅配ドライバーだけではない。いずこも同じだ。実際、いくつかの大手ブースではカタチや商品は違ってもそんな業界のもつ課題、あるいは少子高齢化で今後課題になるであろう事態に対処する参考出品やコンセプトが多かった。
たとえば自動車整備業界のトップランナーBANZAI(バンザイ)。そのメインブースでは最小の車検整備スペースで効率的かつ迅速に車両検査を可能にするプレゼンテーションが行われていた。従来フルタイム4WDの各種検査測定をする際必要だった12mスペースをわずか5mに短縮した検査ライン、スマートグラスを使ってハンズフリーで記録簿作成ができるウエアラブル点検&結果入力システム、ひとつのモニターで各種検査結果を表示するハイブリッドメーターなどがそれだ。いずれも参考出品だが、その完成度は高くイベントでの反響をみながら順次リリースする予定とのこと。
スペースを小さくすることで検査時の車両移動も減らす、また検査環境を劇的に改善(工具とペンを持ち替えたりする必要がなくなる)することと相まって、安全かつ迅速な検査ができるようになるわけだ。これはいわば少ない検査員でも多数の検査をこなすことにつながり、人材不足にも対応する。
もうひとつ印象的だったのがあちこちのブースで見かけたピンク、「ピンク色」のピンクだ。
そう、女性を対象とした展示物を発見。まさか、と思うような蛍光色を施した工具の数々、一方では女性が作業しやすい機能を加えつつピンク色のワーキングウエアなど。後者は今秋発売予定だが、前者はすでに数年前から順次ラインアップを増やしジワジワ売れているという。
このほか商品ではないものの、イベント会場のなかで自社ブースを目立たせるためにすべてのデモ機材をピンクにしました、という出展者もあった。男性はもちろん女性をも含めて意識しているのは明らかだ。
自発的に女性を意識した展開をしているメーカーもあるが、これには理由がしっかりある。2015年政府が打ち出した「女性の活躍促進等により交通事業の担い手を確保・育成する」という方針だ。整備士の高齢化、若者の人材不足を補うべくこれからは女性にもやさしい環境や装備を整えていく必要があるのだ。
急速に自動化が進む新車の世界だが、車検や整備の世界ではまだまだ進化の余地が残っている。近い将来、女性だけの整備工場がたくさんできたり、車両検査自体、数分で済んでしまう時代がくるかもしれない。