実際のクルマがもつ空気抵抗はCd×前方投影面積(A)
クルマの空気抵抗は、空気密度×速度の二乗×空気抵抗係数×前方投影面積で求められます。空気密度は気温と気圧によって左右されます。速度というのはクルマの車速になります。つまりそれは外的な要因なので、クルマのボディそのものの空力性能は空気抵抗係数×前方投影面積になります。それがCd×Aという数値になります。
空気抵抗の指標としては、Cd×Aがそのクルマの空力性能を示しているわけです。クルマのカタログなどではCd値だけが一人歩きしていますが、実際にはCd×Aのほうがクルマの性能としては重要なのです。
なぜなら空気抵抗についていえば、Cd値の差よりも、前方投影面積の差のほうが大きいからです。Cd値は最悪の部類になるミニバンでも0.35くらいですが、最高の部類のプリウスでも0.25程度。つまり30%程度しか違わないのですが、前方投影面積は70%も違うのです。
もっといえばミニバンのCd値を8%改善するのは、結構大変なことだと思いますが、前方投影面積を8%削るには、セレナがステップワゴン並みの車高になればいいのです。
空力には6つの性能があります。Cd値はそのひとつでしかなくて、空気の力がクルマにさまざまな力を及ぼします。Cd値以外はすべて操縦安定性に影響するものです。ただしクルマにはサスペンションが付いていて、姿勢や車高が変化していくので、クルマの空力性能も常にいろいろ変化し続けます。安定した空力性能を得るためには、まずボディの姿勢を安定させないとならないのです。