612ps・850Nmで0-100km/h加速3.4秒のモンスターセダン
メルセデス・ベンツのアッパーミドルクラスサルーン「Eクラスセダン」。その高性能モデル「メルセデスAMG E 43 4MATIC」を上まわり、そして歴代Eクラスを通じて最速のパフォーマンスを与えられたモンスターサルーン「メルセデスAMG E 63 S 4MATIC +」がついに登場した。
搭載されるエンジンは、「メルセデスAMG GT」と基本設計が共通の4リッターV8直噴ツインターボ「M177」型。砂型鋳造されたクローズドデッキのアルミニウムクランクケースに鍛造アルミニウム製ピストンを組み合わせることで、充分な強度を確保しながら軽量化した。また、シリンダーウォールにスチールカーボン材を溶射コーティングすることで、フリクションロスを低減している。
2基のターボチャージャーは、V型シリンダーバンクの外側ではなく内側に配置されることで、エンジンを可能な限り小型化しつつ、ターボチャージャーへの吸排気経路をスムースにし、さらにツインスクロールとすることで、低回転域から良好なレスポンスを得ている。
メルセデスAMGが独自開発したこれらの最新技術により、「E 63 S 4MATIC+」は先代に比べて排気量が1.5リッター少なくなったにもかかわらず、27馬力高い612馬力、同じく50N・m高い850N・mを獲得。そして0-100km/h加速は、先代よりも0.2秒速い3.4秒に達している。
その一方で、環境性能や快適性にも配慮している。「Comfort」モードで走行中、1000-3250rpmで低負荷の際に、2・3・5・8番のシリンダーを休止する気筒休止機能を初めて搭載した。
さらには各種センサーからの情報によりドライビングの状況を検知して、マウントの硬さを自動で調整する磁性流体エンジンマウントを採用し、さらに排気管内に3つの連続可変エグゾーストフラップを備える「AMGパフォーマンスエグゾーストシステム」を標準装備するなど最新技術も惜しみなく投入されている。
そして、メルセデスAMGが開発した新しい四輪駆動システム「AMG 4MATIC+」を搭載。従来からの「4MATIC」は前後トルク配分が固定のところ、「+」を名に冠するこのシステムでは、前後トルク配分を50:50から0:100の範囲で可変させることで、発進時から高速走行、ハイスピードコーナリング、コーナーの立ち上がり加速などで高い安定性とコントロール性を両立している。
さらに、駆動配分を0:100の完全後輪駆動にすることで、サーキット走行時などでドライバーの意のままに操ることができる「ドリフトモード」を新たに採用。走行状況に応じてロッキング機構を電子制御することで、トラクションを高め限界領域におけるコーナリングスピードを向上させる電子制御AMGリミテッド・スリップ・デフと相まって、意のままに挙動をコントロールすることを可能にした。
トランスミッションは、トルクコンバーターの代わりに湿式多板クラッチを採用し、伝達効率を高めシフトチェンジスピードを速めた電子制御式9速スポーツトランスミッション「AMGスピードシフトMCT(マルチ・クラッチ・テクノロジー)」を搭載。一般的なトルコンATに見られる損失を低減しつつ軽量化することで、燃費とレスポンスの向上を図っている。また、シフトダウン時の自動ブリッピング機能やレーススタート機能も採用した。
足まわりには、「エアボディコントロールサスペンション」をベースにメルセデスAMGが開発した「AMGライドコントロールスポーツサスペンション」を装着。コーナリング時やブレーキング時には硬いスプリングレートに瞬時に切り替えることで、高い安定性と俊敏なハンドリングを両立させた。
さらに、走行状況に合わせて四輪それぞれを電子制御する連続可変ダインピングシステムを採用。快適な乗り心地からダイナミックな走りまで、センターコンソールのスイッチで「Comfort」「Sport」「Sport+」の3つのモードを選ぶことができる。なお、高速走行時には走行安定性を向上させるため、車高を下げるようプログラムされている。
ホイールはフロント9.5J×20、リヤ10J×20のセンターロックホイールデザインを採用した「マットブラックペイント20インチAMGクロススポークアルミホイール(鍛造)」を標準装備。タイヤはフロントが265/35R20、リヤが295/30R20だ。
ブレーキはフロントが390×36mm、リヤが360×24mmの軽量コンポジットタイプのドリルドベンチレーテッドディスクを採用し、絶対的な制動力を確保するだけではなく、ばね下重量軽減にも配慮している。
ハンドル位置は左と右どちらからも選べ、価格は1774万円。日常からフォーマルな場まで場面を問わず使えるセダンボディに、雨の高速道路からサーキットでのグリップ、そしてドリフト走行まで、圧倒的な性能とともに意のままに操れる走りを備えた、このモンスターサルーンが後方から近づいてきたら、並のスポーツカーはただ道を譲るしかないのかもしれない。