メーカー選手権のヒーロー達【ポルシェ908】 (2/2ページ)

クーペモデルのショートテールがモンツァ1000kmでデビュー

 タイプ908の先陣を切って68年のモンツァ1000kmでレースデビューを果たしたのはクーペモデルのショートテール仕様だった。これが基準モデルとなり、同年のル・マン24時間にはテールを伸ばした908LHが実戦デビューを果たしている。共通した特徴としてはテールエンドにマウントされた左右一対のフラップ。

サスペンションに連動して仰角が変わるウィング(フラップ)は、日産R381でもエアロスタビライザーとして装着されていたが、当時のドライバーのコメントからも、高速コーナーでは威力を発揮していたことが容易に想像される。

 翌69年にはテクニカルレギュレーションが変更され、グループ6のSPでもオープントップが認められるようになったことから、ポルシェではより軽量化で効果が見込めるオープン化を進め908/2型に移行している。ちなみに、このタイプ908/2には、クーペモデルをオープンとしただけの前期型と、より平べったいボディとダルノーズを採用した後期型が存在する。そして前回紹介したタイプ917に主戦の座を譲った70年、究極の908が登場する。

 それが軽量化を徹底的に追求したタイプ908/3。同時にミッションをエンジンとデフの間、つまりリヤアクスルより前にマウントするなどして運動性能も大きく引き上げられており、立派すぎる体躯の917では苦戦が予想された、タルガフローリオやニュルブルクリンク(当然、今でいうノルドシュライフ)向けに用意されていた。

 今から考えれば、あれもガルフカラーのバリエーションだったのかもしれないが、ライトブルーのボディに深紅で矢印状にストライプを走らせて、グリルの周囲にルージュを塗り、車両を区別するためにスペードやクローバー、ハートやダイヤをあしらった908/3の活躍を、片田舎に住んでいた少年は、社会人になった兄が買って来たCARグラフィックやドライバーなどの自動車雑誌の記事を貪るように読んで知ることになる。

 ホワイトボディの#1号車は68年式の908KH。リヤのボディから浮き上がるフラップに注目! 一方、同じ純白ボディの#64号車は69年式の908LH。KHと比べるとリアのフラップ(ウィング)のマウントなどが違っているのが興味深い。ともに2015年の2月にシュトゥットガルトのポルシェ博物館で撮影。ホワイトボディのノーズをオレンジに塗った#266号車は69年式の908/2。フェンダーがノーズから盛り上がり、コクピット前にウインドシールドがある前期型だ。

そして究極の908が変則ガルフ・カラー(?)の#40号車で70年式908/3。この2台は2009年に初めてポルシェ博物館を訪れた際に撮影。ノーズを黄色に塗った#60号車は72年のル・マン24時間で3位に入賞した個体で2015年の2月にフランスはミュルーズにある国立博物館で撮影。

そして恒例となったフェイク・コーナー(?)だが、ライトブルーのボディに深紅の矢印を2本あしらった#9号車。こちらは国内のレーシングカー・コンストラクターとしては老舗中の老舗、鈴鹿に本拠を構えるウェストレーシングカーズ製のVIVACE-908。

 標準仕様ではAE86用4A-Gを搭載しており、パフォーマンスは充分以上、とか。「旧過ぎて最近の若い人には人気ないんや」とは神谷社長の弁だが、型は揃っているから受注生産だが今でも購入は可能なようだ。気になるムキはサイトをチェックされたし。


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