最後は3度のインディ500王者カストロネベスをかわして優勝
佐藤琢磨が遂に頂点に上り詰めた。F1モナコ・グランプリ、ル・マン24時間レースと並び世界3大レースと評されるインディ500に優勝した。今回、フェルナンド・アロンソがモナコ・グランプリを欠場してまで欲したインディ500の勝利を奪ったのだ。
天候悪化が心配される中、スタートした今年の第101回大会。事故が多発したものの無事に200周をコンプリートした。
プラクティスから好調だった佐藤琢磨は4位グリッドからスタート。琢磨は中盤にピット・ストップのミスがあり、一時は17位に埋もれたものの、じわじわ挽回し最後のリスタートを2位で迎えた。
トップが経験の少ないマックス・チルトンならばチャンスありと思われたが、後ろから強敵が迫ってきた。3タイム・インディ500チャンピオンのエリオ・カストロネベスだ。カストロネベスは2台をあっという間にオーバーテイクし、琢磨は3位に転落した。
しかし、そこからがこの日のハイライトだった。残り6周でチルトンを追い落とすと、その勢いのまま残り5周でカストロネベスから首位を奪取。
カストロネベスも諦めないが、琢磨の気迫はそれに勝っていた。大接戦のまま琢磨がインディ500のトップ・チェッカーを受けた。
琢磨は語る。「もう信じられないですね。いや、うれしいですし、でも本当に勝ったんだという。何か現実ではないみたいで。だけど35万人の中で走るということだけでもスペシャルで、この5月に入ってから、チームメイトとともにクルマを作り上げてきた結果が、こういう形で、最高の形でレースを送ることができたので本当に幸せです」
「10ラップ、20ラップしてくるとタイヤのデグラデーション(消耗・劣化)が始まって、ここをギャレット(琢磨担当エンジニア)と一緒に注意してクルマを作っていたのです。ですから非常に車が安定していて、デグラデーションというか性能劣化は一番少ないクルマの1つだったと思います。そのため15ラップ過ぎから、どんどん順位を上げることが出来て、そこが今日の強さだったと思いますね」
「サイドバイサイドになりましたけど、ターン1について今年は自分もイメージをずっと持っていたので、今回はきっちりと正しい方向でできました」
2012年、ダリオ・フランキッティとサイド・バイ・サイドで飛び込んだ最終ラップのターン1。インを突いた琢磨はスピンを喫し、敗れた。しかし、今回は違った。あの経験を糧に101人目のウィナーに輝いたのだ。
フェルナンド・アロンソの参戦がまた琢磨の優勝に華を添えた。初出場で堂々とトップ争いを繰り広げた技術はさすがF1世界チャンピオンと言わしめるものだった。しかしながら最後はホンダ・エンジンのトラブルでリタイヤしたのは皮肉だった。