【人とくるまのテクノロジー展2017】布製ボディの「リモノ」に見る超小型モビリティの未来
TEXT: 青山義明
PHOTO: 青山義明
実証実験の多くは終わったが普及へ向けての努力は続いている
『社会が変わる、技術が変わる、くるまが変わる』をテーマに、公益社団法人自動車技術会による自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2017横浜」が2017年5月24日(水)から26日(金)にパシフィコ横浜で開催された。
この人テク展の三井化学ブースに登場したのは、布製ボディの超小型EVであるrimOnO(リモノ)。経済産業省出身の伊藤慎介さんと、デザイナーの根津孝太さん、そして、このプロトタイプを実際に製作し今回話を伺った奥村康之さんが立ち上げたプロジェクトである。
リモノは2016年にこのプロトタイプがお披露目された。サイズは全長2.2m×全幅1m×全高1.3m。試作車の車両重量は320kgだが、最終的には200kgを目標にしているという。大人2名、もしくは大人1名と子供2名が乗れるようになっている。交換式バッテリーを使ったEVで、電池交換で航行距離を伸ばすという考えだ。
今回三井化学ブースに登場したのは、このリモノのボディ表面に使用されているクッション材が、この三井化学の「フォルティモ」という高耐久性ポリウレタンエラストマーを使用しているから。いわゆるクッション材は黄変し、ボロボロに劣化していくという(原付スクーターなどのクッションをイメージするとわかるだろう)。このフォルティモならば耐久性もあり、変色も抑えられるという。
気になるのは、その参入を狙った「超小型モビリティ」という区分だ。国土交通省の、軽自動車未満で原付以上というコンパクトカーである超小型モビリティ(1~2人乗りで高速道路の走行は不可)認定制度というもの。
2010年から実証実験、そして2012年にガイドラインが策定され、この車両区分への参入を目論み、トヨタ車体のコムスの2人乗り仕様車や日産のニューモビリティコンセプト(チョイモビ)、トヨタi-ROADなど、各社が昨年まで実証実験を重ねていた。
その多くの実証実験は終了。その後、具体的なものが出来上がったかというと、そんなこともなくもう終わってしまったんでは? と思われている向きも多いだろう。国土交通省では、「今後も超小型モビリティの普及に向けた関係者による協力と支援を継続していく」ということで、まだ勉強会という形で継続的に意見交換を行っているという。
もちろん、この奥村さんたちも継続して超小型モビリティの実現に向けて努力をしている。「この便利な日本で移動手段がなく困っている人たちがいる。スピードは必要ないが交通手段として自動車が必要な層が存在している」とその必要性を説く。免許を返納してしまって身動きが取れなくなってしまう、という方々に、代わりにどうかという提案もできるのでは、ということだ。
現在リモノの最高速度は45km/hと設定されているが、奥村さんは「速度を上げれば上げるほど安心から遠ざかってしまう」と、最高速度は30km/hでいいという。超小型モビリティ実現に向けての努力は続けられている。