販売力をアップさせる目的で各メーカーが多チャンネル化を進めた
日本のメーカーでは、そのメーカーの販売網をより強固なものにするために販売チャンネルを複数用意していた時代があった。
現代ではトヨタがその手法を残すのみ(トヨタ店、トヨペット店、ネッツ店、カローラ店)だが、過去には日産がブルーステージとレッドステージ(古くは日産店、プリンス店、サニー店など多岐に渡った)を持っていたり、ホンダがプリモ店、クリオ店、ベルノ店を持っていたりしており、販売チャンネルごとに取り扱い車種が異なっていたのである。
では、なぜそんなことをしていたのかというと、各地域に販売チャンネルの数だけ販売店を置くことで、そのメーカーの販売力をアップさせようという思惑があったからだ。そのため、各メーカーともに兄弟車と言われる、中身は共通ながら内外装を差別化したモデルを用意するなど、バリエーションを増やす努力をしていたのである。
そんななか、他メーカーよりも多チャンネル化に躍起になっていたのが当時のマツダだった。バブル期真っただなかだった平成元年前後に、元々のマツダ店に加え、ユーノス店、アンフィニ店、オートザム店、オートラマ店の5つのチャンネルを引っ提げて年間販売台数100万台を目指したのである。
……まあ、結果はここでは触れないことにして、当時の5チャンネルがどんな車種を中心に取り扱っていたのかを振り返ってみよう。
・マツダ店
多くの車種をバランスよく取り扱っていたのがマツダ店だ。ファミリアからクロノス、クーペのMX-6、フラッグシップのセンティア、RVのプロシード、ワンボックスのボンゴと一通りの車種をラインアップ。強いて言うならばスポーツモデルが手薄だったと言えるかもしれない。
・アンフィニ店
マツダ5チャンネルの中でもとりわけスペシャリティ感が強かったのがアンフィニ店。すべて専売となるMS-6、MS-8、MS-9やMPVなど、アルファベットと数字を組み合わせた車名が特徴。なかでも忘れてはならないのがアンフィニ・RX-7だろう。FD3S型RX-7もデビュー当初はアンフィニ専売だったのだ。
・ユーノス店
ユーノス店、というよりも当時のマツダ最大のヒット作であるロードスターが売られたのがこのブランド。他にも市販車初の3ローターロータリーエンジンを搭載するコスモなどが知られている。また、ユーノス店ではシトロエン車も販売しており、コンパクトなAXからZX、BX、そしてXMまで取り扱っていた。
・オートザム店
どちらかというとコンパクトカーが中心のラインアップだったオートザム店。アルトのプラットフォームを流用しながらもまったく異なる内外装を持たせたキャロルや、軽ワンボックスのスクラム、そして忘れてはいけないミッドシップ&ガルウィングドアのAZ-1もオートザム店扱いだった。
その一方でオートザム店はイタリア、ランチアの正規輸入権も取得し、デルタやテーマも販売している。もちろんフェラーリエンジン搭載のテーマ8.32も取り扱い車種のひとつだった。
・オートラマ店
オートラマ店は他のマツダ販売チャンネルとは異なり、フォードブランドの車両のみを扱っていた。といっても、マツダ車ベースのフォード車、いわゆる日本フォードの車両が中心となっており、フェスティバやレーザー、テルスターなどが主力車種だった。
ただ、純然たるフォード車も取り扱っており、エクスプローラーやサンダーバード、リンカーンコンチネンタルもラインアップしていた。