サイズ・重心高・回転のバランスなどそれぞれにメリットがある
レシプロエンジンの形式にはさまざまなものがある。まず、世界的に乗用車向けとしてもっとも一般的なのは直列エンジン。シリンダーを直列に並べたもので、構造がシンプルで部品点数も最小限で済むメリットがある。6気筒以上になると長くなりすぎるため、比較的小型のエンジン向けとなる。
現代では3気筒、4気筒、6気筒が一般的で、基本的にはシリンダー数が偶数の方がバランスが取りやすいとされているが、バランサーなどの発達により、3気筒や5気筒でもスムーズな回転を実現できるようになった。直列6気筒は振動を打ち消す効果が高く、素晴らしい回転フィールが得られることでファンが多い。直6ではBMWのシルキーシックスや日産のRB26、直4ではホンダのK20Aや三菱の4G63など、マニアが愛してやまない名機が多い
V型はシリンダーを左右交互にV字型に配置したエンジンで、6気筒以上の多気筒化で直列式よりエンジン全長を短く抑えられるメリットがある。大排気量化しても比較的コンパクトに収められるため、世界的に大排気量エンジンの多くはV型を採用。90年代以降、ボディ前部にクラッシャブルゾーンを設けたいという狙いもあって、6気筒は全長の長い直6に変わって多くがV型に移行した。
部品点数が多くなるため、大衆車向けの小排気量エンジンには不向きとなる。また、V6は直3を、V8は直4をV型につないだ構造となるためモジュール生産がしやすい利点もある。
乗用車用エンジンで直列とV型のほかに採用されるのは水平対向。シリンダーを水平に配置されたもので、ピストンが水平方向に向かい合うようにして動くため、ボクサーのパンチに例えられることからボクサーエンジンとも呼ばれる。
左右にピストンが互いに向き合って動くために振動が打ち消され、直列やV型よりも低重心で搭載できるのが大きなメリット。ただし、横幅が広くなるため車体の全幅に制約のある小型車ではロングストローク化が難しく、補器類を配置する場所が少なくなることから排気の取り回しが難しくなるというデメリットもある。