この記事をまとめると
■スムースでなく急に減速度が立ち上がるブレーキをカックンブレーキと呼ぶ
■ブレーキそのもののほかダンパーのセッティングにも原因はある
■HVやEVなどの油圧と回生ブレーキを協調制御するクルマもカックンになりがち
操作が原因の場合とシステム特性が原因の場合がある
信号が赤だ、となると減速していって、最後のところでブレーキをそのままにしていると、停止した瞬間にカクッとなりますね。それがカックンブレーキと呼ばれる現象です。このカックンブレーキ、助手席の人などをガクッと揺するので、とてもカッコ悪いし、下手をするとクレームが来ますね。
なんとかカックンブレーキにならず、滑らかにスーっと停止することはできないのか? いろいろ練習したりする人も少なくないようですね。
カックンブレーキが起きる原因というのは、2つあります。ひとつめは、どんなクルマでも起きる可能性があるものです。
カックンと後ろに身体や頭を持っていかれるのは、クルマのボディがそういう動きをするからです。ブレーキングしたときにクルマはノーズダイブといってフロントが沈み込みます。そして完全停止したときに、サスペンションが元に戻ろうとして、フロントが持ち上がるのです。
そのカックンをドライバーが軽減しようとすれば、停止寸前にブレーキを緩める必要があります。減速Gを弱くして、フロントを少しずつゆっくりと持ち上がるようにするわけです。
クルマのセッティング面で考えてみましょう。ブレーキングしたときにノーズダイブが大きいクルマほど、カックンが大きくなるわけです。ダンパーの応答性が悪いクルマや、ブレーキの初期タッチが強いクルマは、ノーズダイブが大きくなります。
そしてそういうクルマはとても残念なことに日本車には多いと思います。つまりカックンブレーキになってしまう日本車は比較的多いのです。その原因は、日本人の多くの人が持つ間違ったクルマ観によるものですから、当然といえば当然の結果なのです。
ブレーキをちょっと踏んだだけでグワッと効く必要はありますか? ないんです。ブレーキというのはスイッチではなく、ドライバーが細かくコントロールするべきものなので、リニアな特性が求められるのです。これは人間が使う道具すべてに当てはまる真理です。
たとえば良く切れる包丁があったとして、何でも軽く動かすだけでスパッと切れるとします。となると世の中の奥様たちは、お味噌汁に入れる豆腐を掌の上で切ることができません。まな板は金属にする必要があるかもしれません。切るモノの硬さに合わせて、どの程度に切るのか、人間が力加減によって調整するべきであって、何でもかんでもスパッと切れさえすればいい、というのは間違った感覚です。
残念なことに日本車では、ブレーキをちょっと踏んだだけでグワッと効く、ステアリングをちょっと切っただけでグワッと曲がる、アクセルをチョット踏んだだけでグワッと加速する、といった過剰な特性のクルマが少なくありません。
これはユーザーがそれを価値がある、性能が高い、と間違った感覚を持っているからです。ドライバーが望んだだけ、過不足なく応答してくれるのが、質の高い道具・機械なのです。
アイドリングストップ機構では、ブレーキペダルをセンシングしているので、ブレーキペダルの踏み込みが浅いとアイドリングストップ機構が作動しない場合があります。つまりカックンブレーキを防ぐために停止直前にブレーキを抜くと、アイドリングストップが作動しない可能性があります。