84万2000からの低価格でも品質にこだわる
「第3のエコカー」として2011年9月に発売され、低燃費・低価格・省資源を追求したダイハツの5ドアハッチバック軽「ミライース」がフルモデルチェンジ。2代目となる新型が5月9日に発売された。
「超深化エコ&スマート」をコンセプトに、従来からの低燃費・低価格・省資源に、安全に安心して乗るために必要な性能・装備を「+αの魅力」として加えた軽自動車を目指して開発された新型ミライースは、現行6代目ムーヴがベース。サイドアウターパネルの張力と板厚をアップさせつつボディ全体で力を受け止める「Dモノコック」を現行ムーヴに続いて採用した。
新型ミライースではさらに、各部材の材料選定、補強材配置、結合構造合理化に取り組むことで、必要とされるボディの強度と剛性、衝突安全性能、NV性能と乗り心地を確保しながら、ボディ骨格を約35kg軽量化。部品点数の削減や省燃費化、価格低減も図っている。
外装では、フロントフェンダー、フューエルリッド、Cピラーガーニッシュ、バックドア、ラジエーターサポート、燃料タンク(FF車のみ)を樹脂化し、ガラスも板厚をダウン。
内装では、初代ミライースから採用している2色一体樹脂成型インパネの板厚を0.2〜0.3mm薄肉化し、インパネを支えるPPメンバーもパイプを薄肉化しつつステアリング支持構造を見直した。
さらに、ヘッドレスト一体型となったフロントシートでは、背もたれに異硬化ウレタン材を採用しながら、各部品の小型化や配置・板厚・材質・部品の種類を見直すことでホールド性を高めつつ軽量化。内外装全体で重量を約30kg削減している。
軽量化された内外装に合わせ、シャーシの各部にも手が入っている。先代のタイヤ・ホイールは全車14インチ(155/65R14 75S)だったが、新型では廉価グレード向けに国内最軽量(ダイハツ調べ)となる13インチ(155/70R13 75S)のものを新規開発した。
さらに、ステアリングではギヤを軽量化しつつ、電動パワーステアリング(EPS)モーターを小型化。サスペンションはフロントのロアアームを一枚板にしながら、前後スプリングとフロントナックル、リヤトーションビーム(FF車)の形状を見直すことで、シャーシ全体で15kg軽量化した。
これらの積み重ねにより、車両全体で最大約80kgの軽量化に成功。もっとも軽い「B」および「L」グレードのFF車で650kg、もっとも重い「X“SA3”」および「G“SA3”」4WD車でも740kgの車両重量を実現している。
新型ミライースでは走行抵抗の低減にも注力している。フードヒンジカバーを特許出願中のフィン形状とし、オートおよび電動格納式ドアミラーの形状を変更。さらに、フラットブレードワイパーやフロントアンダースポイラー、四輪タイヤディフレクター、樹脂バックドア一体成型ルーフスポイラー、Cピラーガーニッシュを装着して、Cd値を先代の0.32から0.29へと改善した。
エンジンは従来からのKF-VE型を踏襲しつつ、オルタネーターベルトを低フリクション化。そのほか、CVTケースの薄肉化、スクロール式エアコンコンプレッサーの採用、LEDヘッドランプの設定などで、メカニカルロスや電力消費も低減している。
最大80kgもの軽量化と走行低減の結果得られたJC08モード燃費は、もっとも軽い「B」および「L」グレードのFF車で35.2km/L、「X“SA3”」および「G“SA3”」のFF車で34.2km/L、4WD車で32.2km/L。先代とほぼ同等レベルを維持しているが、本来は燃費低減に寄与する軽量化及び走行抵抗低減の効果は、新型ミライースでは「+αの魅力」、つまり走りの質感向上と装備の充実に向けられた。
パワートレインでは、エンジン制御コンピューターにCVTの制御機能を統合した新世代ECUを採用し、エンジンとCVTをより緻密に協調制御。アクセル開度に対し駆動力がよりリニアに立ち上がるよう改良することで、発進時や追い越しの際の加速性能を高めている。
また、CVTのロックアップ制御を見直して振動やこもり音を低減したほか、ステアリングのダイナミックダンパーをホーンパッドダンパーに置換。さらに、ボディ穴の総面積を約15%削減し、ピラー内側に発泡剤を充填するなど吸遮音材の使用部位を拡大して、会話明瞭度を3%向上させた。
タイヤ&ホイールは前述の通り13インチと14インチが設定されるが、それぞれでフロントダンパーとロア側リヤスプリング取付ブッシュの仕様が異なっている。
まずフロントダンパーは、13インチ用のシリンダーサイズが直径25mmなのに対し14インチ用は直径30mmに拡大。また、後者に超飽和バルブと専用のベースバルブを組み合わせた構造を用いることで、入力速度が遅い領域からバルブの応答性を高めて低速域の操縦安定性と乗り心地を改善しつつ、入力速度の速い領域では減衰特性を飽和させて中・高速域のフラット感と安心感を向上させた。
ロア側リヤスプリング取付ブッシュは、14インチ仕様は受圧面積を拡大した専用品に変更して、操縦安定性と乗り心地を高めている。そのほか全車で、ステアリングギヤのフリクションを低減しつつEPSの制御を見直すことで、素直ですっきりしたステアフィールを与えている。
そして、デンソー製の超小型ステレオカメラを用いた予防安全システム「スマートアシスト3」を、昨年11月の一部改良で初めて採用したタントに続いて設定した。
先代が採用していた、レーザーレーダーを用いる「スマートアシスト」に対し、衝突警報機能および衝突回避支援ブレーキ機能を歩行者にも対応させたほか、被害軽減ブレーキアシスト、車線逸脱警報機能、後方後発進抑制制御機能、オートハイビームを追加。それぞれの作動車速域も拡大するなど、機能・性能とも大幅に強化している。
さらに、前後2個ずつのコーナーセンサーを、「スマートアシスト3」装着車に標準装備しながら、「スマートアシスト3」装着車の非装着車に対する価格アップを税別6万円に抑えている。
パッケージングはほぼ変更されておらず、全高が1500mmへと10mmダウン。室内長が2025mmへと25mm拡大されたが、前後乗員間距離は20mm短い910mm、室内幅は5mm狭い1345mmとなった。ただし、運転席のステアリング取付位置が20.2mm手前に、アクセルペダルの取付位置が12.7mm下側に変更されたことで、より自然なドライビングポジションが取りやすくなった。
一方でエクステリアデザインは、先代の丸みを帯びたシンプルなものから、エッジの立ったスクエアな造形へと改め、力強さと先進感を表現。さらに、ノーズを長く見せるフロントバンパーと、ワイド感を演出するリヤバンパーおよびバックドアガラス両サイドの黒色ガーニッシュで、安定感を醸し出した。
室内は従来からの水平基調と自発光式デジタルメーターを踏襲しながら、細部の造形をシャープなものに変更することで、エクステリアと共通性を持たせている。その一方で堀込み式カップホルダーをインパネ両サイドに、インパネロングアッパートレイをインパネ助手席側に新設するなど、物置きスペースを増やし運転席まわりの使い勝手を高めている。
ボディカラーは、新型ミライースの立体的なデザインを強調する新開発色「スカイブルーメタリック」のほか、「ブラックマイカメタリック」「プラムブラウンクリスタルマイカ」、「マゼンタベリーマイカメタリック」、「レモンスカッシュクリスタルメタリック」、「スプラッシュブルーメタリック」、「ホワイト」、「パールホワイト3」、「ブライトシルバーメタリック」の全9色が設定された。
グレードは、安価なものから下記の6種類を設定。
・ビジネス向けの「B」(FF…842,000円、4WD…972,000円)
・「B」にスマートアシスト3と前後コーナーセンサーを装着した「B“SA3”」(FF…907,200円、4WD…1,036,800円)
・「B」にバックドア車名メッキエンブレムとリヤドアパワーウインドウ、13インチホイールキャップを追加した「L」(FF…874,800円、4WD…1,004,400円)
・「L」にスマートアシスト3と前後コーナーセンサーを装着した「L“SA3”」(FF…939,600円、4WD…1,069,200円)
・「L」から足回りを14インチ仕様に変更し、電動格納式カラードドアミラー、全面UVカットガラス、スモークドリヤ&バックドアガラス、LEDヘッドランプ、ツートーンインパネ、リヤヘッドレスト、ブルーイルミネーションメーター、メッキパーツ、バニティミラー付きサンバイザー、車速感応式間欠フロントワイパーを追加し、スマートアシスト3と前後コーナーセンサーを標準装備した「X“SA3”」(FF…1,080,000円、4WD…1,209,600円)
・「X“SA3”」にキーフリーシステム、キーフリーシステム連動オート格納式ドアミラー、前席シートヒーター、運転席シートリフター、チルトステアリング、SRSサイドエアバッグ、プッシュボタンスタート、車速感応式オートロック機能付きパワードアロック、オートエアコン、14インチアルミホイールを追加した「G“SA3”」(FF…1,209,600円、4WD…1,339,200円)
なお、「B」および「B“SA3”」には、硬質ボードとビニール表皮を組み合わせた「ビジネスデッキボード」を標準装備し、後席を倒した際にフラットかつ剛性が高い荷室となるよう配慮。さらに、キーレスエントリーとフロントパワーウインドウを標準装備し、電動格納式ドアミラー、UVカット機能付きスモークドガラス、LEDヘッドランプ、ブルーイルミネーションメーター、車速感応式間欠フロントワイパーをセットにした「ビジネスユースフルパック」をメーカーオプション設定している。
価格の安さと燃費性能を維持しながら、内外装と走りの質感、安全性能を大幅に強化した新型ミライース。果たして先行する直接のライバル、スズキ・アルトの牙城を崩すことができるか?