技術者たちによる100年来の夢を実現
4ストロークエンジンを生み出したニコラウス・アウグスト・オットーは、当初から濃い混合気と薄い混合気が層状に折り重なって燃焼することで、静かで安定したパワーが得られるという考えを持っていました。
これを層状燃焼といいます。しかし多くのエンジン技術者がチャレンジしたものの、その領域に達することはなく、幻の燃焼と言われていました。その層状燃焼をCVCCは現実のものにしたのです。オットーサイクルが生れてから100年近くの時間を経て、ホンダがそれを実現したのです。
しかしCVCCはパワーアップの要求に応えることはできず、1980年代後半に姿を消すことになります。高精度な電子制御燃料噴射装置をはじめとする燃焼制御技術や、三元触媒の登場などによって、排気ガス対策のためのCVCCの役割は終わったのです。
しかし現在、CVCCの後継のような技術が登場しています。それはF1用エンジンです。直噴インジェクターの周りに空間を作り、そこに点火させるシステムが採用されているのです。CVCCを現代的にリファインしたようなシステムは、ジェットイグニッションシステムと呼ばれています。
その狙いはおそらくノッキング限界の向上で、同じブースト圧であっても、エンジンの圧縮比を高くすることが可能になっているのではないか、と想像します。40年以上前の革新技術が、現代にリバイバルしているといっていいでしょう。
(写真:ホンダ)