コーナリングの切れ味にこだわった乗り手を選ぶセッティング
クルマの味付けはとにかく曲がる。ニュートラルステアというより、弱オーバーステアのレーシングカー的なセッティングで、ピーキーなリヤはドライバーがコントロールするという志向。それが本来のスポーツドライビングだという発想なのだ。下手なドライバーだと、怖いと思うかもしれないが、マツダはこのシャープさにこだわった。
一方でこのFC3Sからは、リヤサスペンションにトーコントロールハブ付きのセミトレサスが採用され、独立懸架に発展(SAは4リンク+ワットリンク)。ターンインのレスポンスと、SAにはなかった直進安定性、安定したコーナリングフォースを与えようとしている。これはのちの4WSブームの走りでもあった。
エンジンは、当時最強のロータリー=13Bターボを搭載。当初185馬力だったが、最終型では215馬力までパワーアップ。マツダが重視する軽さによってもたらされるパワーウエイトレシオは、約5.6㎏/psだった。そしてボディも当時としては進んだ空力特性で、最高速度は240km/hを誇った。
さらにブレーキには、国産初のアルミ4ポッドキャリパーを採用。曲がる、走る、止まるの3拍子が揃った、ピュアスポーツの名に恥じない一台だった。ちなみにFC3Sは、仮想ライバルとして当時のベストFR車と言われた、ポルシェ944を設定。
パフォーマンス面では、そのポルシェ944を上まわっていたが、ルックスはその944に酷似しており、リヤサスのローコントロールシステムも、ポルシェのヴァイザッハ・アクスルから学んだものなので、「和製ポルシェ」の殻を破ることには成功したとは言い難い。
1987年8月には、ロータリーエンジン生誕20周年を記念して、カブリオレが登場。ロータリー2ドアモデルのオープンカーは、あとにも先にもこのFC3Cのカブリオレのみ。合計約30万台が生産され、世界的にもRX-7=ピュアスポーツカーと認められた、昭和末期を飾った歴史的な一台だ。