大柄なCTSを狭い市街地で乗っても取り回しは難儀せず
ではCTSはどうか? ステアリングを握って走っている限りはATSと同じ方向性で作られていることがわかる。ほんのわずかCTSのほうが走りにゆったりした雰囲気、よりグランドツーリング寄りという印象を受けるぐらいだ。
ただしCTS-Vの6.2リッターV8OHVスーパーチャージャーは独特! 好き嫌いが分かれるであろう音、649馬力、855N・mが背中をグイグイ押す感覚は強烈だ。
私自身は、より洗練された印象の3.7リッターV6ターボや、CTSよりも俊敏な身のこなしが気に入り、ATS-Vを推している次第だ。
ちなみに折り返し地点の群馬県・甘楽のとりわけ狭い一般道をCTSで走行したが、取り回しで難儀することはなかった。視界や車両感覚の掴みやすさなどは、まったく問題がない。
さて、5台乗ったなかでもっとも印象が違うのはCT6だ。インテリアの感じから走りまで、ラグジュアリーな雰囲気が漂う。
だからといって冒頭に述べた、多くの日本人がいう「アメ車」的なのではないところが面白い。ステアリングのセンター付近はシッカリしているし、たとえばS時のようなコーナーでも、上モノが左右に揺すられ位相遅れを起こすようなこともなかった。
そして今回乗った5モデルには「ドライバーモードコントロール」スイッチが装備されている。これはステアリング、トランスミッション、サスペンションの特性が変化するものだ。
これ自体は普通のこと。国産、輸入を問わず、最近のクルマにはこういったスイッチがよく装備されている。
キャデラックの場合、3段階になっており、それぞれ「ツアー」「スポーツ」「スノー/アイス」というモード名称だ。ATS-VとCTS-Vに関しては「トラック」が加わり4段階になる。わかりにくい2つについて説明すると「ツアー」が標準走行で、「トラック」はいわゆるサーキットモードということ。
じつはあえてモードについて触れたのは、普段使うであろう「ツアー」と「スポーツ」を切り替えたとき、足まわりの特性変化がハッキリしていて、しかもそれぞれ「使える」と思ったからだ。
というのも、エンジン出力特性が変化するようなものが付いていると別なのだが、足まわりの特性変化ぐらいだと、モードスイッチが付いていても、オーナーになるとほとんど標準から切り替えないということが多い。
しかしキャデラックのセダンシリーズは積極的に切り替えてほしいと思うぐらい、この2モードの変化は大きい。「スポーツ」を選ぶと足は確かに硬くなるが、不快なものではなく、ステアリング操作に対しての車体全体としてのレスポンスが上がる。このぐらいハッキリ違いが表れるなら普通のオーナーでも切り替える気になるハズだ。
この足の制御は、電気を流すことで磁性流体を用いたダンパーの減衰特性が変わる「マグネティックライドコントロール」により行っている。瞬時に減衰が変化し、説明によれば、1000分の1秒単位で路面状況を読み取って制御しているとのことだ。これ自体もベースは最新の技術ではないが、GMは以前から使い続けており、そのためか確実に使いこなしている感がある。