1936年から変わらぬ製造方法を貫いている
クルマは鉄でできているものというか、作るもの。木でできたクルマなんて、子どものおもちゃじやあるまいし、と思うかもしれない。じつはあるのだ。しかも21世紀の現代においてだ。ご存じの方もいるかもしれないが、モーガンは伝統的にフレームに木を使っている。
最新モデルのエアロ8ではさすがに内装の一部などに使用するのみだが、1936年から作り続けられている4/4は今でもフレームは木製だ。そもそも1936年に登場したクルマが今でも新車で作られていること自体、驚愕すべきことではあるが……。
以前、某メーカーの伝説的エンジニアにクルマを開発していて一番驚いたことはなにか? と聞いたら「高度経済成長のとき、鉄を使うことこそが美徳とされて我々はドンドン使っていたのに、新車のモーガンが木で作られているのを見てビックリというか、ガックリした」と苦笑いしていた。それほど木でクルマを作るというのは常識外のことといっていいだろう。
ただし、1900年代初頭の自動車創生期にはクルマは木で作られるのは当たり前だった。自動車はもともと馬車にエンジンを載せたものだっただけに、木でフレームやボディなどが作られているのは当たり前ではあったのだ。実際、コーチビルダーと呼ばれるボディ架装メーカーは、馬車を扱っているところが多かった。
戦前期の日本車でも同様で、やはり馬車の延長線であった時代があり、試行錯誤のうえ、木でフレームやボディを作ったりする。
高性能化が進むと、当然のことだが、木ではパワーに絶えられなくなるし、耐久性にも欠けるのが問題になっていく。次第に鉄でシャーシなどを作るようになったが、剛性の関係ないボディの一部は木で作られ続け、現在でもローズウッドなどのウッドパネルはその名残りと言っていい。
もちろん衝突安全性という点では木でフレームを作るのは新型車では許されないことであるし、出火時の安全確保においても、ウッドパネルも難燃化が施されている。モーガンが木でフレームまで作ることができるのは、約80年間作り続けられているからにほかならない。
(写真:morgan)