科学的な要因ではないが確実にEVに向かって進んでいくだろう
ヨーロッパでは急速に電動パワートレインへのシフトが始まっています。その大きな要因は多分に政治的なものであり、技術的・科学的な進捗ではないので、何とも判断が難しいですね。
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20世紀は石油の世界であり、そのため大きな油田を持つ中東は常に戦火の中にありました。21世紀は石油時代からの脱却を目指していて、そのひとつがCO2という政治テーマになります。そもそもCO2による地球温暖化というのもまた、科学的な問題ではないことは、多くの人が知っていることだと思います。
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EVの大きな問題点は、電気エネルギーを保持するための器です。現代の技術では二次バッテリーが最適とされていますが、その性能の径年劣化は大きな問題点です。あらゆる二次バッテリーは充放電を化学反応によって実現しているので、どうしても劣化してしまいます。
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新車のときには200kmの航続距離だったものが、3年もすれば120kmというようなことが起きます。航続距離というのはクルマの性能の重要な要素です。つまり性能自体が大きく劣化してしまうのです。
もし最高速度が100km/hだったクルマが、3年後に60km/hしか出ないとなったら、おそらく大規模リコールと大型訴訟が待っていることでしょう。
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いわゆるエコ的な側面からいえば、二次バッテリーは製造時に大量のエネルギーを消費します。また自然放電というエネルギーの放出があり、最終的にはリサイクルするときにさらに大きなエネルギーを必要とします。
そもそもリチウムイオンバッテリーにしても、充電効率と放電効率を掛け合わせれば50%を少し超える程度、つまり充放電すればエネルギーは半分になってしまうのです。
そしてEVの本格的な普及に関していえば、現在の二次バッテリーに代わる、画期的なバッテリーが不可欠な存在なのです。ただそれはまだ、完成していません。
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私の子供のころから「石油はあと40年で枯渇する」と言われていました。40年経った今、それでも石油はたくさんあって、むしろ余っていて価格が下落していますね。新しい油田が発見されたり、また新しい採取方法が開発されたりして、石油の残量はどんどん増えているのです。
いや、正確にいえば、そういう流れは判っているものの、それを無視して「枯渇するする詐欺」をやってきたわけです。そのほうが儲ける人が居て、それが都合のいい人が存在するからです。ちなみに地球の環境から推測する石油の残量は、あと500年分とも、60000年分とも言われています。
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それでも世界はEVに向かっていく可能性は高いでしょう。なぜなら政治とは、科学的に正しい必要はないからです。法律というのもまた、人間と社会の関係性でしかなく、科学的に正しい必要はありません。エネルギー的にメリットがあるかどうかはともかく、メリットがあると多くの人に思わせることができるのであれば、それでいいのです。
たとえばCO2による地球温暖化問題と同じ文脈ですね。そして残念なことに、日本人は流されやすく、そうしたカタルシスのなかに身を置きたがる傾向があるようです。