シンクロ機構があっても回転を合わせないとギヤの痛みが早くなる
それを手助けしてくれるのが、いわゆるシンクロ機構。シフトレバーと連動しているスリーブ(ギヤとシャフトを結合パーツ)が動くとき、スリーブがシンクロナイザーリングを次のギアに押しつけることで、摩擦力が生じ、ハブの回転数と次のギアの回転数を近づかせ、同期させることで、ギヤを入りやすくしてくれているありがたいシステムだ。
しかし、このシンクロ機構も、1000回転単位の回転差を、一瞬で同期してくれるようなシロモノではないので、各ギヤの回転差をほとんど気にせず、でたらめなシフトチェンジをすると、シフトレバーを動かそうとしても、ギヤがなかなか入らなかったり、入れるときにギヤが鳴ったり、シフトショックが大きくなる。
こうしたシフトチェンジを繰り返せば、当然、ギアも傷むし、シンクロナイザーリングも早く消耗しその働きも弱まってしまう……。というわけで、シンクロ機構はあくまで微調整用のアシストと考え、できるだけドライバーのペダルワークを含めたシフトワークによって、各ギアの“回転数を合わる”のが、運転の達人への道。
回転が合っていたかどうかという判断は簡単で、ギヤがスムースに入り、クラッチをつないだときにシフトショックがなければ大成功! 上手に回転を合わせられたときは、シフトは吸い込まれるように、スッと次のギヤに入っていくし、反対に回転の同期が不十分なときは、シフトが入りたがらず、抵抗が大きい。
当然のことだが、同期が上手くシフトチェンジのスキルが高い人は、ギヤやシンクロが傷まないので、長期間オーバーホールなどが不要で、走行距離が伸びても良好なシフトフィールが維持できる。
前記の往年のF1ドライバー、アルボレートやピケなどは、レース後、ミッションをバラしたとき、他のドライバーよりギヤなどのキズや鉄粉が圧倒的に少ななく、ミッショントラブルの発生回数が少なかったので、世界一のシフトチェンジャーと評されていたのだ。