なり振り構わぬ挑戦者から横綱相撲を続ける堂々の王者へ
前回お届けした【フォードGT40・前編】に続き、後編をお届けしたい。
MarkⅡに進化したフォードGT40は、1966年にヘンリー・フォードの悲願だったル・マン24時間初優勝を果たすと、翌67年にはさらにポテンシャルアップしたMarkⅣに発展する(間のMarkⅢに関しては後述)。
モノコックにアルミのハニカム構造材を採用してシャーシ剛性を高めるとともに、空力性能を追求していった結果、ボディデザインには大幅に手が加えられることになった。
MarkⅡまでのモデルと比較してみると、最大の違いはヘッドライト。それまで角形一灯式だったものが、丸形の四灯式に変更され表情が「ふくよか」になっている。また全体のシルエットも、ずいぶんグラマラスなものに移るが、空気抵抗(係数)は間違いなく向上しているはずだった。個人的な好みでは、フォードGT40シリーズのなかでも、この「ふくよか」なMarkⅣが一番好きだ。
そのほかにも、エンジンや各部の耐久性を高めていたことも大きな特徴だった。そんなMarkⅣは、67年のセブリング12時間レースで実戦に登場。最大のライバルであるフェラーリが不参加で、当面のライバルとなったのはシャパラル2D/2Fや、やはりこのレースがデビュー戦となったアルファ・ロメオ・ティーポ33だった。だがいずれも、時折速さは見せるも結果に結びつくことはなく、MarkⅣはデビューレースウインを果たしている。
そして連覇を目標に臨んだ同年のル・マン24時間でも、トラブルフリーで終始快調に周回を重ねたD.ガーニー/A.J.フォイト組がライバルの追撃を振り切ってトップチェッカー。フォードにル・マン2連覇をもたらした。
ホモロゲーションモデルとして誕生したMarkⅢ
1967年に登場、前年にMarkⅡが悲願の初制覇を達成したル・マン24時間レースにおいて、堂々の2連覇を達成することになったのが丸目2灯のMarkⅣだが、その2年前、1965年には同じ丸目4灯のルックスを持ったMarkⅢが登場している。これはMarkⅣのホモロゲーションモデルとして企画されたものだが、同時に、MarkⅣの、というかフォードGTシリーズを通じて唯一のロードゴーイングモデルとして人気を博することになった。
先にふれたように丸目2灯のルックスはMarkⅣと共通しているが、もう少し詳しく見て行くと、例えばノーズのトランク(!?)リッドにはキーシリンダーが組み込まれていたり、ノーズにはFORDの4文字が、デカールではなくバッジとして取り付けられていたり、と、これがレーシングカーではなくロードゴーイングモデルであることに納得させられる。そう言えば、ポルシェが生産したグループC・レーシングカーの956は、ドアをロックするのに市販車のポルシェと同じデザインのキーを採用していた、とレース業界の先輩から聞いたことがある。
赤いボディに白い2本のストライプが走る#1号車は67年式のMarkⅣ。この年のル・マンで勝った仕様となっているが、個体そのものの出自は不詳。シックなマルーンカラーのボディを纏うのは68年式のMarkⅢ。リッドのキーシリンダーやFORDのバッジが市販のロードゴーイングモデルをアピールする。