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【大学・大学院生が自動車の安全技術を研究】東京都市大学が最優秀賞を獲得!

【大学・大学院生が自動車の安全技術を研究】東京都市大学が最優秀賞を獲得!

東京都市大学が日本初の世界大会優勝を目指す

 2017年3月6日(月)、都内にある公益社団法人自動車技術会では、学生安全技術デザインコンペティション(SSTDC=Student Safety Technology Design Competition)日本大会が開催された。

各国政府の道路交通政策担当者・自動車メーカー、大学などが集う自動車の安全技術に関する「ESV国際会議」のプログラムの一つとして、2005年から開催されている学生安全技術デザインコンペティション。

 各大学・大学院の学生チームが独自に考案した安全問題解決のための技術アイディアを発表し、その斬新さや発展性・実用性などを競うというもの。今回の日本大会(国際大会の代表選考を兼ねている)では、過去最多の5チームがこの最終選考となる決勝大会に進出している。

 大学生・大学院生のチームによる、自動車の安全問題を解決するためのプレゼンテーションと、それを具体化した作動プロトタイプを用いたデモンストレーション、その2つが審査対象となる。審査には、国土交通省や自動車メーカーの走行安全技術に関わるメンバーが担当する。

「ESV国際会議」は、2年に一度世界大会が開催されているが、今年がその開催年にあたり、今回国内で最優秀賞を獲ると、デトロイトで6月に開催される第25回ESV国際会議(ESV2017)での「2017年学生安全技術デザインコンペティション国際大会」の日本代表として出場することとなる。ちなみに、日本のチームが世界大会での優勝・準優勝した経験はない(アジアでは韓国のチームが2013年のソウル大会で準優勝を飾っている)。

 今回の日本大会に出場するのは4校5チーム。そのうち3校3チームは昨年に続いての決勝進出だ(この3チームはいずれも前回のテーマをさらに進めた)。

 昨年の日本大会シード校(世界大会が開催されない年の最優秀校は翌年のシードとして書類審査免除となる)である「Team PAPA (Protection Against Placental Abruption/東京都市大学)」は、「自動車前面衝突時における妊婦乗員の胎盤早期剥離に対する腹部変形の影響とその低減手法の提案」というテーマで、前年の研究をさらに進化させた内容でのプレゼンを行った。

 これは妊婦が交通事故に遭った場合の母体の安全だけでなく、胎児の安全を確保する重要性から、とくに胎盤早期剥離に起因する胎児障がいの低減を検討。衝突事故時のステアリングへの接触による局部的変形が、この胎盤早期剥離の一要因として、妊婦乗員用拘束装置の提案するというもの。そのため、子宮にかかる荷重が計測可能な模型の作成、新たな拘束器具の作成、そして試験および評価を行なっている。

「ブラウ・ゲファー(青木研/日本大学)」も昨年のテーマで再挑戦ということで「衝撃神の帯(インパクトベルト)」をプレゼンテーションした。

 こちらは、横滑りを起こした際の自動車が樹木や電柱などにぶつかるポール衝突が事故発生率に対して死亡率が非常に高いことに注目し、前後の衝突に比べ、ポール衝突に対しクラッシャブルゾーンを広く取れないことをその理由に挙げ、側面衝突に対する乗員の被害を軽減する提案を行なった。

 それは、インパクトビームに置き換え、引っ張り強度に優れた繊維形状の材料を使った薄肉のベルトで、衝突エネルギーを吸収するというもの。前年使用したCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製のベルトから、今回は伸び率が3.6倍あり、引っ張り弾性率が0.4倍低いGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)へ材料を置換して再挑戦となった。

「Team Hongo(東京大学)」も同じように、昨年のテーマを継続。前回は「むち打ち防止のためのブランコ型シート」から「円弧状レールを用いたむち打被害低減シート」へと内容を進化させてきた。車内天井部にシートを吊るすというブランコ型シートの問題点(ルーフ部の強度の問題やドライビング姿勢を保持できない点)を踏まえ、この新型シートは、シートレールを円弧上にしたものとなった。

 平常時はロック機構で固定されているが、衝突時エアバッグセンサーなどを利用してロックが解除されシートは円弧状に運動。それにより頭部・胴体・シートが一緒になって動くことでむち打ちの防止ができるというものだ。

「バイオメカニクス研究室(日本大学)」は、「下腹部内臓器の傷害評価のための腹部ダミーの開発(昨年のテーマをリニューアル)」というテーマ。このチームの研究室では交通事故実態調査を行なっており、腹部障害のうち小腸などの腸管の損傷と、腸と腸の間にある腸間膜の損傷が多く報告されているという。

 患者の多くはシートベルトを着用しているものの、サブマリン効果などにより、シートベルトがせりあがり腹部に荷重がかかった可能性が高い。受傷メカニズムの解析とその評価が重要として腹部ダミーモデルの開発を行なった。

「Team Duck(慶応義塾大学)」は、出会い頭での事故が追突事故に次いで多いことに着目した「インフラ設置カメラによるドライバーへの俯瞰映像提示システム」を提案。

 追突事故に対しては、運転支援システムの普及が進んでいるが、出会い頭事故に対しては限定エリアでの普及にとどまっているということで、交差点に設置されたカメラからの俯瞰映像をネットワークを経由して車内に表示し、カーブミラーでの判断の難しい道路での認知を支援するというもの。

結果、「Team PAPA (東京都市大学)」が最優秀賞に輝いた。決勝に進出した4チームには優秀賞が贈れられている。実行委員長代理である本田技術研究所の上地幸一氏は「現在の自動車メーカーの技術研究開発に匹敵するレベルでした。将来に向けて(それぞれの科研究テーマを)もっと磨き上げていってほしい。(Team PAPAには)ぜひ今年は日本が一位になれるよう、あと3カ月あるので、再度プレゼンテーションの流れを組み立て直し、世界大会に向けて頑張ってほしい」と総評した。

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