トヨタ・ミライやホンダ・クラリティとは異なる戦略への夢が広がる
2017年3月1日(水)~ 3日(金)、東京・お台場にある東京ビッグサイト東7ホールで開催となった「FC EXPO 2017 ~第13回[国際]水素・燃料電池展~」。会場には、燃料電池車(FCV)であるトヨタMIRAIやホンダ・クラリティFUEL CELLが並び、水素・燃料電池に関する技術、部品・材料、装置などに関係する280社が出展している。
その会場で、フランスのSymbio FCell(シンビオフセル)が日産のe-NV200をベースにしたFCV「シンビオFCV」を発表した。シンビオフセル社は、電気自動車に組み込むタイプの燃料電池キットシステムの設計、製造、販売を行なっている。
これまでルノー・カングーの電気自動車「カングーZ.E.マキシ」をベースとしたFCV(35MPaの水素タンク1.7kg/70MPaの水素タンク2.08kgと、22kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載)を製造してきた。このカングーZ.E.-H2は航続距離300kmを達成しているという。
今回、FC EXPOで発表したのは、日産の電気商用車であるe-NV200をベースにしたFCV。もともとのe-NV200からさらにバッテリーを追加搭載しており、駆動バッテリーの総電力量は36kWh(ベース車は24kWh)となっていることからFCVというよりはハイブリッドEVということも言える。
FCスタックの出力は15kW。リヤ側の床下に2本の70MPa水素タンク(3.6kg)を備えており、航続距離500km以上となる。タンクを搭載する分、床下が若干上がっているようだが、7名乗車は維持していた。燃料補給が数分で終了することから、タクシーのニーズにターゲットを絞っているようで、展示車はタクシー風に仕上げられていた。
国内自動車メーカーのうち、燃料電池車に積極的であったトヨタ、日産、ホンダの3社のうち、日産を除く2社はすでにFCVを市販している。現在様子見状態といえる日産としては、先行する2社に対していつFCVを投入するか、ということについてはアナウンスをしていない(日産は、ダイムラーとフォードとFCV開発で提携しており、まもなくメルセデスが、SUVモデルとなるメルセデス・ベンツGLCベースのFCVを発売すると発表しているが……)。
先行する国内の市販FCVが、ともに4ドアセダンであることを考えると、後出しジャンケンとなる日産としては、あえてそこに当てていく必要もないだろう。さらにリーフなどバッテリーEVでの積み上げてきた知見も組み込むことを考えれば、このe-NV200をベースとしたシンビオFCVは、日産の量産市販FCVの姿と被って見えてこないだろうか?
(写真:青山義明)