東洋医学と栄養学の視点からアプローチ
自動車技術会によるモータースポーツ・シンポジウムが3月1日、東京・新宿にある工学院大学・新宿キャンパスのアーバンテックホールで開催となった。
13回目となる今回のシンポジウムでは「モータースポーツ技術と文化 ─進化し続ける開発手法の最前線─」と題して、SUPER GTやMOTO GPマシンの開発手法や、さまざまなシミュレーターの開発の現場での活用など最新技術を紹介する機会となった。
WIMは、ドライビング・アカデミーや参加型モータースポーツに力を入れているマツダが「モータースポーツ界における女性の活躍」を推進していくプロジェクトとして、FIA(国際自動車連盟) Women in motorsport commissionアジア代表委員の井原慶子選手とともに活動を始めたもので、2015年にスタート。
メンバーは、基礎トレーニングに運転訓練を重ね、その後、レース活動を希望するメンバーが実際にスーパー耐久シリーズやマツダが主催するロードスターパーティレースやマツ耐に参戦。2015年のレース入賞者は延べ19名だったが、2016年は入賞68名、優勝12名と大きく成長を果たしている。ライセンスホルダーも現在は28名おり、そのうち2名が国際Bライセンスを持っている。
登壇したのは2期研究メンバーの後藤瑞季さんと大平夢見さん。後藤さんは、鍼灸あん摩マッサージ指圧師、大平さんはスポーツフードアドバイザーという資格を持つ。つまり東洋医学と栄養学の視点から、それぞれ走行時の集中力を高め、維持することと、走行からの効率的な回復方法を研究課題として取り組んでいる。
大平さんは、実際にWIMメンバーのマツダの美祢試験場での訓練時に、食事や飲料の摂取を2グループに分けて実験を行ない、集中力や走行後の疲労状態をチェックするなどし、レース時の栄養摂取方法を工夫することで集中力の維持と体力の回復をできる可能性があることがわかってきたという。さらに、今後は女性特有の生理周期における栄養摂取方法の提案などにも広げていきたいという。
また、後藤さんも、走行前に経穴(ツボ)のマッサージと走行後にシール鍼を貼ることで実際の効果を確認するという研究を行なっている。そしてシール鍼の疲労回復の効果はあったと結論付けている。が、走行前のマッサージは、緊張度は低下したものの、集中度に変化は見られなかった。そのため、逆にレース前のマッサージでドライバーのペースを乱す可能性があることや、そもそも緊張度が下がったこと自体がドライバーに良かったのかが不明ということで、マッサージを行なう経穴の変更なども含め、さらなる研究を進めていくとしている。
女性ドライバーはそもそも男性ドライバーと比べ、一般的に体格が大きく異なる。その身長差だけでなく、足が小さいことによるアクセル&ブレーキ操作時の足の踵の位置やひざを曲げる角度の問題など、女性のことを意識し安全をしっかり担保するシートやシートレールの開発の必要があるという。さらに筋力の発達が難しい女性への体幹・筋力トレーニングの重要性についても触れたうえで、女性脳を生かしたレース展開も含めた、さらなる研究を進めていきたいと語った。
WIMの活動で、根性論だけでない、さらに女性のモータースポーツ進出を期待したい。