なぜヒール&トゥを使う必要があるのか
クルマのカタログなどで、「走行性能曲線図」というグラフを見たことがあるだろう。あのグラフを見ればわかるとおり、クルマは同じ速度で走っていても、選んだギヤによってエンジンの回転数は変わってくる。例えば同じ100km/hでも4速なら4000回転で、3速だと5100回転になるクルマがあるとしよう。
このクルマで100km/hで走行中に、4速から3速にシフトダウンしようとし、クラッチを切って3速に入れ、そのまま素早くクラッチをミートさせたらどうなるか。4速と3速では1100回転の差があるので、一気に強力なエンジンブレーキがかかり、いわゆるシフトロック現象が発生する。
その結果、クルマは非常に不安定になるし、コーナリング中ならスピンモードになることも……。また駆動系にも大きなストレスがかかり、一歩間違うとエンジンをオーバーレブさせて壊してしまうこともある。
そこで各ギアの回転差を埋めるために、クラッチを切っているうちに、アクセルをひと吹かしし、回転を合わせて変速ショックをゼロにする、ヒール&トゥというテクニックが編み出されたというわけだ。
クルマではやや特殊なテクニックだが、バイクではブリッピングシフトダウンはごく一般的なテクニック。