1馬力が支える重さのことで数値が小さいほど加速が優れる
パワーウェイトレシオとは、車重に対する馬力の大きさのことで、古くからクルマ雑誌などではクルマの加速力の目安として算出されてきた。駆動方式やエンジンの搭載位置などのトラクションに影響する条件が同じで、同じ馬力のエンジンなら、より車重が軽い方が加速力が高いという理屈だ。
日本で一般的に使われるのは馬力あたりの重量なので、単純に車重を馬力で割った数字が使われる。数値が小さいほど加速力が優れていることを示すが、F1などのフォーミュラカーが最強クラスとなり、0.5~0.6kg/馬力ぐらい。
レクサスLF-Aや日産GT-R、ポルシェ911GT3などの市販車のトップレベルでも3kg/馬力前後なので、F1マシンの加速力は想像を絶するものがある。
その対極として、自衛隊の90式戦車は1500馬力もあるが車重が50トン以上もあるため約33kg/馬力とかなり悪い。
市販の四輪車では、パワーウェイトレシオが5kg/馬力以下だと加速性能がかなり良いと評価できるので、速さの判断基準のひとつといえるだろう。
国産スポーツ系では、まだ馬力競争に明け暮れ、受動安全ボディ作りの意識があまり高くなかった90年代から2000年代のモデルのほうが最新モデルより軽量だったので、パワーウエイトレシオの平均値が低かった。
スバルのWRX系は2世代も古いS202がいまだに4.16kg/馬力で歴代スバル車最強。ランエボも1995年発売の「Ⅲ」の4.41kg/馬力が歴代最強であるなど、加速力においては、全体的に古いモデルのほうが刺激が強かったことがうかがえる。
軽自動車では新旧含め速いものでも10kg/馬力程度だが、黎明期を見てみると、軽自動車第1号のスズライトは36.6kg/馬力しかなく、かなり遅かった。
スズライトにやや後れて発売されたスバル360は24.1kg/馬力(いずれも初期型)で、当時の軽自動車としては驚異的に速かったことがわかる。
2016年には608馬力を誇るベントレー初のSUV、ベンテイガの登場が話題となったが、車重は2.4トンもあるにもかかわらずパワーウエイトレシオは3.9kg/馬力とかなり優秀で、異次元の加速フィールが味わえる秘訣が見える。
パワーウエイトレシオを様々な角度で見ると、クルマの動力性能の進化や時代背景が浮き彫りとなり興味深い。