たった1台の貴重なモデルが雪上に姿を現した
2017年1月、富士重工業が国内メディア向けに「スバルオールラインアップ雪上試乗会」を開催した。オールラインアップという言葉の通り、水平対向エンジンを搭載する国内仕様の全モデルが雪上特設コースに集められていた。
その中にはFRレイアウトのBRZもあったし、ある意味で希少なフォレスターの6速MT車もあった。もちろん、日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したインプレッサは2リッターAWDから1.6リッターFFまで用意されていたし、レヴォーグ、レガシィ、クロスオーバー7といったモデルを思い切り雪上で振り回して、スバルの魅力を知ると同時に、共通した味付けを感じる機会になったのだ。
その会場入り口に、一回り大きい軽自動車くらいのクラシカルなクルマが置かれていた。その名は「スバルff-1 1300G 4WD(プロトタイプ)」。現存一台という、超貴重なスバルAWDの原点が、雪上に置かれていたのだ(夜間や降雪時はパネルトラックの中でしっかり保管されていたそうです)。
現在でこそ、販売台数の98%がAWD(四輪駆動)となっており、スバルといえばAWDというイメージが強いが、最初の登録車である「スバル1000」に始まるシリーズは水平対向を縦置きに搭載したFF(前輪駆動)を基本としていた。
それは限られたボディサイズの中で居住空間を最大限に確保するためであり、今どきのクルマでは当たり前のように存在するフロアのセンタートンネル(排気マフラーやプロペラシャフトが通っている空間)はなく、完全フラットな床を実現していたのだ。
そのためにマフラーは床下の脇を通されているほどだった。そうした思想ゆえに、最初期のスバルは、プロペラシャフトを持つ四輪駆動というのは基本コンセプトから外れるものであったのは想像に難くない。