偶然ブルーバードの駆動系がマッチした
そんなスバルが水平対向エンジンの縦置きFFレイアウトが四輪駆動に発展させやすいと気付き、今の繁栄につながった原点といえるのが、この「スバルff-1 1300G 4WD」である。
その開発は、東北電力が冬場の保守管理業務用の車両として各社に「快適で、燃費性能に優れた四輪駆動車」を求めた中で、スバル本体ではなく現地ディーラーである宮城スバルが手を挙げたことに端を発したというエピソードは有名だ。
縦置きトランスミッションの後端から出力を取り出し、既存のFR車の駆動系と合わせることでスバルのFF車は4WDに改造できる、という結果論的に見れば非常に有効な手段を誰かが思いついた。
そうして生まれた最初の試作車には日産ブルーバードの駆動系が流用されていたのだという。それは完全に偶然というからおもしろい。たまたまブルーバードのファイナルギア比が、ベース車のスバルと相性のいい数値で、うまく四輪駆動として走れたというのが理由なのだ。
この頃はセンターデフなどない直結四駆のため、ファイナルギア比が合うというのは、本当に奇跡的といえる。その縁もあって、現在のスバル車においてもリアディファレンシャルは日産から調達しているというのも、またおもしろいエピソードだろう。
その試作車を元に、富士重工業本体が作り上げた最初のプロトタイプが、ここで紹介する「スバルff-1 1300G 4WD」である。普段は富士重工業・矢島工場のビジターセンターに展示されているという貴重な一台を雪上に置いてしまうという機会は、おそらくこれが最初で最後。それにしても、降雪期のために生まれたクルマだけに、なんとも雪景色の中に佇む姿が似合う。