速さはないが動かすだけでワクワクする走り
スペックから考えても、動力性能に特筆できるものはないが、四輪独立のストラットサスは上手にチューニングされていて、四輪にディスクブレーキを採用したのも、軽自動車ではビートがはじめて。
とにかくビートには、街なかでも、郊外でも、ワインディングでも、どこでも小気味よく走れて、わくわくさせるものがあった。
もうひとつ肝心なのは、ビートを街中で見かけると、クルマ好きの人もそれほどでもない人も、「おっ」とか「ほほう」といった顔をするという点。乗って楽しく、見る人も何となくうれしくなるクルマ。こんなクルマは国産車では、ビートのほかに数えるほどしかないだろう。
ホンダという自動車メーカーは、基本的に遊び心を持ったメーカーだと思うが、「スポーツカー」となると、どうも必要以上に構えてしまって、肩肘を張った力んだクルマになってしまう傾向が強い。
しかしこのビートのようなクルマが作れるのは、世界的に見ても日本のメーカーだけだろうし、そのなかでもやはりホンダだけ、さらに言えば、80年代後半から90年代前半のホンダしか作れない傑作車だったのかもしれない……。
そういう意味では、年式が古くなり、純正パーツの製造廃止などで、今後の維持管理は難しいかもしれないが、現存している個体は大事にしてもらって、一台でも多くのビートが、「現役」であり続けることを願ってやまない。